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小倉昌男 経営学 ( 小倉 昌男 )

いわゆるノウハウが書かれた本ではないけれど、 <br />さまざまなビジネスの現場で新しいサービスや製品を生み出そう(生み出したい)と <br />ココロの何処かで思っている人にはうってつけの本。 <br /> <br />いまや当たり前になっている「宅急便」のあれこれを通じて、 <br />企業があるべき姿を考えさせられる。

 日本の宅急便史は昭和五十一(一九七六)年に遡る。このサービスと市場を創造・開拓、今日に至るまで成長させ、かつ自社ヤマト運輸の「クロネコヤマトの宅急便」をブランドとして定着させた故・小倉昌男氏。彼の「経営学」に関心を覚えるのは、第一に宅急便という業態とサービスに一消費者として馴染み深いからです。運転手が側道停止時に左扉から乗降する便宜を計った改良型トラック、集荷・配達に訪れる好印象のセールス・ドライバー(SD)、昨日送ったとの連絡を親元から受けるや今日指定時間通りに配達される荷物…。本著「経営学」は、普段消費者の立場から身近に接触し観察するヤマト運輸について、それら個々のサービス改善・向上を司った背後の経営者哲学と、その適用の過程・結果を説明してくれます。第二は、巻末にある「経営リーダー10の条件」にもある「高い倫理観」と「論理的思考」です。氏は“企業の存在意義は…地域社会に有用な財やサービスを提供し、併せて住民を多数雇用して生活の基盤を支えることに尽きる”と言明します。資金繰りに苦悶し利潤追求に時間とエネルギーを奪われるのは、企業経営者として忌避できぬ事実。しかし“利益は手段であり、企業活動の結果。”氏は「高い倫理観」に根ざし“社格”と“社徳”を備え地域社会に貢献する、という理念の体現自体を、企業目的の本音に据え気骨をもって生き抜いていたのです。“サービスが先、利益は後”と繰返し論及していることと相まって、全編を通じてその信条を証していることに、私は本書の一つの大きな意義を見出しました。またその目的と手段・結果の主体と客体関係も、「論理的思考」関係なのです。第三は、氏の経営信条と業績は、日本が世界に紹介して誇りうる一つの好事例と思うからです。素朴でそれでいて入念に著された価値ある一冊です。

この手の経営に関する本を読んで、『面白い』とか『学べた』と思ったことはありましたが、感動したのは初めてです。 <br />本書に込められたメッセージは非常に解りやすくて、本質的な正論は難解ではなくシンプルなのだと再認識しました。世の中で間違っているようでまかり通っている事はいくつもあると思いますが、間違いは間違い、正しい事こそ正しいのだと安堵感を覚えます。 <br />思わずヤマト運輸に転職したくなりますので、上司と喧嘩した日は読まない方がいいかもしれません。

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小倉昌男 経営学&nbsp;「儲からない」といわれた個人宅配の市場を切り開き、「宅急便」によって人々の生活の常識を変えた男、小倉昌男。本書は、ヤマト運輸の元社長である小倉が書き下ろした、経営のケーススタディーである。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;全体を通して読み取れるのは、「学習する経営者」小倉の謙虚さと、そこからは想像もできないほど強い決断力である。成功した人物にありがちな自慢話ではない。何から発想のヒントを得たか、誰からもらったアイデアか、などがこと細かに記されている。講演会やセミナー、書籍、マンハッタンで見た光景、海外の業者に聞いた話、クロネコマークの由来…。豊富なエピソードから伝わってくるのは、まさに学習し続ける男の偉大さである。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;一方で、並々ならぬ決断力を持っていたのだと思わせる記述がいくつかある。宅急便に注力するため、大口の取引先であった松下電器との長期にわたる取引関係を終結させたこと、三越岡田社長のやり方に反発し、「とてもパートナーとして一緒に仕事をしていくことはできなかった」として取引関係を解消したこと、運輸省を相手に訴訟を起こしたこと…。いずれも確固たる論理がその根底にあった。それにしても見事な決断力と言わざるを得ない。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;終わりの部分で紹介されている宅急便の各種サービス内容や、有名なNEKOシステムなどの話は、流通・物流の関係者以外には興味がわかないかもしれないが、全体的に読みやすく、興味深いエピソードが満載なので、読んでいて飽きることがない。経営者としての小倉の人となりが伝わる、好感の持てる1冊である。(土井英司)
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