自伝には自画自賛がつきまとうし、他者が書く伝記には事実誤認がつきまとう。そういった事を読者なりに割り引いて読んでも、フィッシャーブラックにも色々なことがあったんだな〜としみじみさせてくれる本。
日本語のタイトルから、単純にいろいろなエピソードが満載の普通の伝記かなと思いました。原著者が現役の経済学者なので、気軽に読める本ではありませんでした。教科書の副読本に使えるのではないでしょうか。数学的な議論、経済学の標準的な知識がないと十分に理解できません。また、人物名がカタカナになっているので、原著論文を探すのが面倒ですし、文献一覧表が抜けているような気がします。
<br />ブラックという人が、CAPMを主な道具として、他の人が思いも付かない解決方法で経済学を再構築しようとした孤高の探求者であることが描かれています。もちろん、生い立ちや学生時代や就職、研究者としての生活と家庭の問題など、一人の人間としての側面も描かれています。
ブラックが何をどう考えていたのがよく分かる本。ただし訳本のタイトルに金融工学者とあるのはひどい(原著のタイトルにはない)。この本を読めばブラックの業績が金融工学にとどまらないことはよく分かるはずなのに。天国のブラックさんが怒っていないか心配です。