”戦略サファリ””マネージャーの仕事”などの著名な作品で知られる巨人だ。
<br />日本での知名度はいまひとつだが,実例に基づく考察はすばらしい。
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<br />彼はMBAを全否定していわけではなく、MBAを取得したからといってマネージメントの仕事ができる
<br />わけではなく、逆に仕事を運営するにあたり、弊害になると言いたいのだ。
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<br />それは、MBAが、彼が唱えるマネージャーの能力として必要な分析力、直観力、経験のうち、
<br />分析力しか養わない。
<br />その養った分析力のみを使用するとマネージメントはうまくいないということだ。
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<br />私はMBAは、基礎学力や、方法のひとつだと考えている。
<br />MBAで論理は鍛えられるが、現実のビジネスでは感情が支配することもある。
<br />こと感情という面では、MBAで鍛えることはできない。
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<br />また、自分の仕事以外のケースを勉強することは、普遍的な一般則をまなぶことはできるかもしれないが、では具体的に今の仕事にどう生かすかという、落とし込みは非常に難しい。
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<br />彼は、そうしたMBAの足りないところについて補完するシステムを構築して、運営している。
<br />その試みについては、すばらしいと思った。
私自身、MBA取得を真剣に考え始めた所で、MBA関連の本を買いに行ったら、
<br />タイトルが目に付き、思わず買ってしまった。
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<br />本書のMBA教育の問題点の指摘は、説得力がある。
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<br />・マネジメント能力を持つ人材を育成する、という理念のもと、
<br />・マネジメント経験のない若者に対し、
<br />・financeやstrategy等のスキルを断片的に、
<br />・ケーススタディを使って教育する。
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<br />という現状について、
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<br />・マネジメントは、現実の問題を、アート(直感)、クラフト(経験)、
<br /> サイエンス(科学)を総動員して解決する営みであり、
<br />・絶対的な経験が不足している学生にスキル(サイエンス)を教え込んだ所で
<br /> 本当のマネジメント能力は育成されない。
<br />・スキルについても、個々のスキルを断片的に教えてもマネジメント能力は向上しない。
<br /> →スキルを現実の問題に適用するには「統合」が不可欠。
<br />・ケースは実際の状況を紙に落とす段階で、目に見えない細かな情報を
<br /> 多数削ぎ落としており、ケースを解決したから現実に適用できる、
<br /> というのは無理がある。
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<br />⇒「間違った相手に、間違った内容を、間違った方式で教えている状態」
<br /> と指摘する。
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<br />Harvard卒業生のその後、等実例も豊富で読みやすく、指摘は鋭い。
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<br />一方で、そのMBAに大量に人材を派遣している企業が多いのも事実。
<br />MBA批判に終始するのではなく、企業がなぜ派遣するのか、という点を
<br />分析する視点があった方がより客観性を増すと思う。
「誤ったMBA教育により、MBAホルダーが誤解される(あるいは、有効に活用できていない)」
<br />というような内容であると思う。
<br />MBA教育自体よりも「現状のMBA教育」への問題点への投げかけである。
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<br />MBAホルダーになって以降陥りがちな問題点を指摘し、その原因がどこにあるのかを分析している。
<br />問題に気がつくホルダーと気がつかないホルダーがいる。
<br />気がついているホルダーは自己修正をしながら、卒業後も自己鍛錬を進め、
<br />気がつかないホルダーは卒業が自己のキャリアゴールとなり、能力は低下している。
<br />自分自身も国内ビジネススクール時代に、よくみた誤ったホルダー予備軍の将来像が
<br />ミンツバーグが指摘する「会社を滅ぼすMBA」になるのであろう。
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<br />MBAホルダーが自分を戒めて、成長するために読むにはとても有効な本であると思う。