非営利組織の仕事をするようになって、それ以前に自分がいたビジネスの世界(営利の世界?)との差異をまだ消化しきれていません。自分にとって当たり前と思えるやり方をそのまま使いたくなる欲求にさいなまれるとき、実は”金槌でネジをたたく愚”をおかそうとしているのかもしれないと不安になります。
<br /> 「ビジョナリーカンパニー【特別編】」は、そんな不安の緩和に役立ちます。社会セクターのやりかたにくらべてビジネスの世界のやり方が全てにおいて根本的に優れているとは限りません。その組織が歴史的に成し遂げてきたこと、営利組織よりも優れている点を理解するのが優先です。もちろん、その上で、さらに偉大な組織になるためには何が必要なのかは考えなければいけませんが。
<br /> 発刊予定を知ったとき、”ビジョナリーカンパニーの考え方を社会セクターに当てはめた話らしい”と聞いて期待していました。ジェームズ.C.コリンズが書いたというのであれば、事実に基づいた深い知見を与えてくれるに違いありません。社会セクター(あるいは非営利組織)についての本を読むのはP.F.ドラッカーの「非営利組織の経営 原理と実践(1991)」以来のことでした。
<br /> 期待通りの内容ではありましたが、「3」ではなく【特別編】と命名された意味もわかりました。本格的に多数の実例に基づいて実証しているわけではありません。ただ、それを待たずに経験と直感から作った仮説としてでも先に出版すべきだという判断に感謝します。私は、今年この内容を読む必要があったからです。
企業ではなく社会セクターを対象として書かれた本。ただし、細かなところ
<br />で前著「ビジョナリー・カンパニー2」と相違点はあるけど、基本的な主張
<br />は変わらない。企業と社会セクターとで相違はあるが「偉大な組織」を追
<br />求するためには何が必要かという点では違いがない、というのがポイント。
<br />だから、「ビジョナリー・カンパニー2」の要約版という位置づけも可能。手っ
<br />取り早く「ビジョナリー・カンパニー2」の内容を理解したりおさらいしたりする
<br />のに向いている。
あのベストセラー『ビジョナリカンパニー』のコリンズの名を借りた「儲け主義」に走った本と言える。安価だが、やはり、コリンズのしっかりした調査に基づいた『ビジョナリーカンパニー』の「その3」を読者は望んでいたはずである(残念!)。
<br /> 早期に汚名挽回を期待する。