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宇宙―そのひろがりをしろう ( 加古 里子 )

この本は、最も想像力を育み、そして一般教養を身につけねばならない時期に読んだことで、世界観や地理感を身につけられた気がする。思えばコペルニクスやガリレオなどが、一生をかけて宇宙に生きる人間という相対感覚をつきとめようとしたのに、現代の私たち少年はこの一冊で宇宙旅行が出来るのだから幸せだった。そして再び20年後の今日読むと、また発見があったりする。 <br />あの頃、自分にとってはここに出てくる「ブロッケン現象」の神秘さが胸を捉えて離さなかった。高い世界ではこういうことが起こるのか、と1ページめくるごとに高さを増してゆく世界はワクワクさせるのだ。自分たちが暮らす世界から、少しずつ高いところを知ってゆき、アルプスなど地上における自然の規模を知り、そして成層圏、熱圏、太陽系、光の届かない何万光年の彼方を知る。絵で知ることができるのだ。もうその頃には、どこまでも果てしない宇宙の奥行き・無限というものに、無意識ながら少年に「虚無」という恐ろさまで知らしめてくれる。科学の本、には違いないけどとてつもない想像力を養ってくれる哲学的な入り口のような、大きさのある一冊だ。

加古里子さんといえば、私にとっては妹に絵本を読んであげた懐かしい記憶と共にある作家です。  あまりにも壮大でイメージのつかみにくかった「海」や「地球」「宇宙」を身近のものからわかりやすく例にとり、やさしく世界を拡げていってくれたその絵本たちは、当時、小学校高学年だった私にとってさえも妹と一緒に夢中になれるような魅力的な内容でした。  「海」は親が選んで買い与えたものですがそのあとの2冊は(断じて妹のために!)自分が親にねだったものでした。 <br>そして、この絵本と思いもかけぬ再会を果たすのは、作家小川一水氏が「ゼネコンSF」(と勝手に命名させていただいた)という新境地を拓いた快作、「第六大陸」のあとがきの中でのことでした。  小川氏がこの本を絶賛ととも�!��紹介されているのを目にして、さっそく手に入れて再読。  そして自分が今も宇宙に想いを馳せるのも、SFを愛してやまないのも全ての原点はここにあったのだと改めて思い至ったのです。  この絵本は加古さんがあとがきで言うとおり「架空の物語ではなく、科学としての見識と態度をもって」(あとがきより引用)宇宙というもっとも大きな空間が描かれています。  しかしながらそこに描かれる世界の拡がりから感じ取れるのはまさに溢れんばかりの「センス・オブ・ワンダー」。  「自然の美しさや神秘さ、不思議さに目を見はる感性」と一般的に訳されている言葉でありSFの重要な要素とされているのですが、私はそれを感じることができるは「自然の美しさ、神秘さ、不思議さ」と「自分自身」とが「つながっ�!�いる」んだと実感できた時だと思っています。  そしてそのことを自分に無意識のうちに植えつけてくれたのがこの本であったことに再読して初めて気がつき驚かされたのです。<p>SOWは決してSFの中だけにあるのではなく現実の世界からこんなにも感じとることができるということを、自分は「自然」の中にいるんだ、「自然」とこんなにつながっているんだ、ということを教えてくれる大切な一冊です。<p>未だに宇宙に想いを馳せるあなたに、<br>そしてあなたの子供たちに「センス・オブ・ワンダー」を。  

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