せがまれて何度この本を読んだことだろう。
<br />考えてみれば、とても不思議な絵本である。
<br />
<br />きつねのぬいぐるみの「こん」は
<br />ある時は「あき」の友人として一緒に旅行に出るが
<br />ある時はぬいぐるみとしておばあちゃんに腕を付け直してもらう。
<br />パステル調の柔らかい、しかしリアルな世界の中で
<br />「こん」は生物/無生物の垣根を楽々と越えていく
<br />不思議な存在として描かれている。
<br />
<br />「こん」はおそらく「あき」と社会との橋渡しの役割を担っているのだろう。
<br />「こん」は一人で電車に乗れない「あき」を先導する。
<br />妙に世間慣れしていたりもする。
<br />しかしそれらは全てどこかで聞いたような知識である点が
<br />このぬいぐるみのフェイクさを表していておかしい。
<br />
<br />「だいじょうぶ、だいじょうぶ」という声が「こん」からではなく
<br />「あき」の内側から聞こえてくるとき、
<br />「あき」はひとり立ちし、「こん」は真のぬいぐるみに戻るのだろう。
林明子さんの描く絵も好きです。この本は原作も林明子さんです。
<br />ほんわかした絵がかわいいです。また、列車内で2人が歩いている所は、「あ、
<br />ゆれてる〜」という感じがとてもうまく表現されていて、子どもの好きな場面でも
<br />あります。「おっとっと〜」って言いながら読んだりもします。
<br />あきが生まれる前からこんはあきの部屋にいます。あきの成長とともにぬいぐるみの
<br />こんはすっかりぼろぼろに…。そこでこんはこんを作ってくれた、砂丘町のおばあ
<br />ちゃんの家に行ってなおしてもらおうとさっさと旅支度。
<br />あきも一緒に。列車での旅はまた一波乱。砂丘町に着いてからも砂丘を見たいという
<br />あきのためにこんは砂丘へ…。ここでも事件が。
<br />そうこうして無事におばあちゃんの家に2人はたどりつきます。
<br />手足もしっかりぬいつけてもらってこんの嫌いなお風呂に入って中の綿も膨らんで、
<br />元のようなきれいなきつねに。
<br />「そしてつぎのつぎのひ、こんとあきは、うちへかえりました。よかった!」
<br />絵の中の列車のお客さんの表情や同一人物探し、時間の関係等クイズにしながら
<br />読んだりするのも面白いです。
赤ちゃんの時からずっと一緒のふたり。
<br />
<br />おばあちゃんちへの旅行という冒険に、助け合い、成長する2人のようすが
<br />林さんの明るくて、優しい絵と文章で表現されています。
<br />
<br />あきちゃんの保護者やナイトよろしく奮闘する一生懸命なこんは、
<br />あきちゃんにとっての永遠のボーイフレンドなんだろうなと思います。
<br />
<br />もちろん男の子やお父さんにもおすすめですよ☆