これはすごい本です。特に絵本に興味もなく、「長新太」がどういう人かもよく知らないままに手にして、びっくりしました。これくらい洗練された、完璧に近い絵本は、日本語世界のみならず全世界のどの時代にも珍しいでしょう! 1910年代、パリのダダイストたちに見せてやりたかった。かんたんすぎるフレーズの反復が陶酔的な魅惑を生んでいます。色鉛筆(?)の彩色の、緑がかったブルーにわずかな黄色が溶けた感じも、ぞぞぞっ。ユーモラスな目つきの猫ちゃんたちの世界旅行、すごい充実感です。そう、これは夜の本、夢の入口の本。作者の他の作品には特に興味を覚えませんが、こればっかりは強烈な傑作だと、ひざまずかずにはいられません。2歳児でも完璧に理解可能、3歳児なら自分ですぐ読めるようになるでしょう。そして子どものいない人も、もしあなたがダダやシュルレアリスムが好きな人であれば、ぜひ買って損はありません。歴史的傑作だと思います!
子供のころ、この本は不気味な作品に感じられました。<br>でも怖いもの見たさとなにかひきつける魅力があり、<br>親に何度も何度も「読んで」とせがんだ記憶があります。<br>するといつも「またこの本~?」と母親に言われたことを覚えています。<br>たしかに読むほうにするとおなじフレーズの繰り返しがほとんどのこの本、<br>なんども読みたくはないですよね。<br>複雑な線で描かれたこの猫たちが子供心にいろいろな想像をさせてくれました。<br>子供の想像力をかきたてるすばらしい本だと思います。
長新太先生は、宇宙を描く作家です。マクロから、ミクロへ、ミクロから、マクロへと、飛び交う多くの作品のなかで、この「ごろごろにゃ~ん」は長先生の私的散文のような、視線が素直に見える傑作です。<p>子供達は直感的に、長先生の中の”自由”に呼応して、大空の遠足に、みんなで行ってくるのです。その目のなかに、大人のみなさんが、子供達の中の事実を読み取る、柔軟性を回復することを願います。<p>この絵本で、目を輝かせない子を、ボクはたぶん心配してしまいます。子供、大人の、心のリトマス試験紙にもなる、あなどってはならない超名作です。