これをビジネス書として実務で役立つかというと、
<br />期待ははずれます。
<br />知識の一つというレベルに留めておくべき。
<br />まず、理論的ではない。
<br />また、ケーススタディが特殊すぎる。
<br />(テロリストと交渉することには。興味はあるが、
<br />国家保安委員会でもない限り実用的ではない)
<br />ハーバード流ということで期待しても、
<br />日本では無理がある。その好例書。
●本書の期待はずれ
<br />訳が稚拙すぎる…およそ大学教授が訳したとは思えない、中高生並みの直訳だらけ。少しは、交渉術とは何かを知っている人が訳すべき。あとがきもショボくて、読んでて恥ずかしい。
<br />論理がバラバラ…唐突に論点を書き連ねているだけ。話があっちこっちに跳ぶし…。目次立てからきちんと考えた方がいい。入門書とも、教科書とも、実用書とも、研究書とも呼べない。ただのメモ書きのレベル。
<br />●交渉術の期待はずれ
<br />学問、研究領域とは呼べない…ハーバード大学の集大成と謳っているが、学問、研究の一分野として呼べるようなものではない。所詮は、泡のようなハウツー本の一つ。
<br />当たり前のこと…わざわざ本にするほどの事ではない。空疎なことを、大げさに書こうとしているだけ。能無しのコンサルの話を聞いているような気分になった。
交渉論と意思決定論を読み出したからには、ロジャー・フィッシャーをやらない訳にはゆかない。‘BEYOND REASON’が書かれたのが2005年で、本著は1991年に書かれた交渉論のロングセラー。この前に旧版があって1982年に書かれているから息の長い研究書だ。
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<br /> 幸いなことに、われわれは良い翻訳者に恵まれて、こなれた母国語として本書のページをめくることができる。少し例を。「強腰および相手の提案を聞く率直さ」、「押しても返しても埒が明かないとすればどうすればいいのか」、「欲得ずくや力ずくでなく」、「ありうべき利益と、たなぼたを受け入れた場合の潜在的代価を比較考量する必要」、「対抗すれば、『意趣を晴らす』ことになるが、・・・ますます事態は悪くなるのが関の山」、「相手が持ち出す可能性のある異議は・・・結果にどう影響するかまでとくと考えておく」、「ことと次第によっては不調時対策案の変更に努力を」、「自分と相手のどちらが交渉力があるかを推し量ろうとするのは得策ではない・・・いずれにしても、交渉を有利に運ぶよすがとはならない」などなどである。本書の内容、あらまし見当が付くであろう。
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<br /> 中心となる議論は、4つある。(1)人と問題を切り離す、(2)立場でなく利害に焦点を、(3)複数の選択肢を用意、(4)客観的基準の強調、これら交渉戦術とその論拠を説く。『新ハーバード流交渉術』につながることになる感情については、一つ目で触れている。感情問題をどう処理するかということのほうが、話自体より重要(p.46)だ、と。
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<br /> ひとつ引用しておこう。「けんかした恋人と仲直りするには、赤いバラの花が相当効果的であることは誰でも知っている」(p.50)らしい。日本じゃどのようなものか、お試しいただきたい。
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<br />索引なし。参考文献なし(これがまずかった)。目次、部章節まで。ひもあり。
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