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本人の人々 ( 南 伸坊 南 文子 )

 南伸坊氏の扮装にはじめて出くわしたのは70年代後半だった。<br> 末井昭氏が編集長をつとめるとある雑誌の連載で、熱海のお宮の松の前で寛一とお宮という設定で変装していたのだが、予算の都合か何かで熊のぬいぐるみを着た寛一と看護婦の格好をしたお宮というものすごい設定であった。<p> その後、1980年刊の「面白くっても大丈夫」(情報センター出版局)の表紙ですでに小林旭の顔真似をしていた南伸坊氏。<p> 雑誌「旅」(JTB刊)では、壮大な歴史上の人々の顔真似の連載に挑戦し、それが「歴史上の本人」(朝日文庫)として出版され、さらに現代の著名人たちの顔真似の連載を雑誌「ダカーポ」(マガジンハウス刊)で展開してまとめられたのが本書である。<br> まさに筋金入りの顔真似である。<p> で、ナニがすごいかと言うと、本当に似ているものと、まったく似ていないものと、部分的にいているものとがあって、実際のバランスで言えば、まったく似ていないものの方が多い。<br> なのに似ているように見えるのである。<br> ああなんて説明すればいいんだろう。<p> 実際、カミさんに、誰の顔真似かを伏せて見せたところ、かなりの確立でわからないと言うのである。あのマイケル・ジャクソンの顔真似でさえ。<br> でも、名前を見せたとたん、「あぁ」っといって、まるで本人の写真を見ているように納得するのである。<br> これはいったいどうしたのか。<p> そこはそれ。本のタイトルにあるように、真似をしているのではなく、本人なのだからあたり前なのだ。たぶん。<br> でもって、写真に添えられている文章がまた最高に本人である。<br> あとカメラマンを務めた奥さんもすごい。<br> 似ていない野球選手モノとかがいくつか続いた後で、宮崎駿の顔真似なんか見た日にはもう笑いが止まりません。<br> 最高です。

なりきりぶりに脱帽(笑)。<br>それぞれにちゃんと毒づいて(?)いるのもいいです。<br>とにかく笑って頷いて楽しめました。<br>個人的には手嶋龍一さんのにハマりました。<br>NHKニュースで手嶋さんが登場するたび思い出し、一人で笑ってます。ほんと特徴とらえてる~。

「ダカーポ」で「本人だもの」の連載が始まってから、毎週真っ先に南さんのページを開くのが楽しみでした。単行本にまとまったと知り、すぐに購入しました。時間軸でいうと、巻末ページがいちばん古くて、巻頭にいくほど新しくなっています。こうして眺めると、連載当初はごくごくシンプルな扮装だったものが、衣裳にしろメークにしろ次第に凝ってゆくのが、一目瞭然。それだけ南さん自身のっていたのでしょう。<br>それにしても似ていますねえ。特に文化人。南さんから漂う空気は、本人の写真よりも本人らしさを漂わせています。養老孟司、椎名誠、村上龍、田岡俊次、田中耕一、猪瀬直樹、辻仁成、手嶋龍一などなど、オニギリ頭の伸坊さんが、よくぞここまで、というほど本人になりきっています。<p>忘れてならないのが、伸坊氏夫人の南文子さんの存在です。いわば伸坊さんは“素材”にすぎません。それを文子さんが得意な縫製やメークなどの腕を生かして、本人以上に本人らしく見せてしまう。撮影も文子さんなのです。見事なコンビだと思います。<p>それにしても月日の経つのは早い。もう忘れかけている「時の人」のいかに多いことか。あと10年経って、半分くらいは「あの人誰?」って言いそうな気がします。

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