本書の真髄は、長期投資にしろデイトレにしろ、投資というものの本質であるリスクテイクの基本的な考え方を理解できる点にある。すなわち、投資期間の長短を問わず、いずれも時間軸上の成長カーブの前半におけるアクセラレーター(加速器)としての役割があるのである。そして、その成長カーブを立ち上げたことに対する果実としての利益と、同時に立ち上げられなかった場合にはペナルティとしての損失という二面性を有しているのである。また、投資はバトンリレーのゲーム的な側面を持ち、如何にして自分の代から次の代へ、バトンを渡し続けることができるかが、どれだけ大きな相場になるかを決めることにもなる。その意味で、次の代である投資家(お客様)への株式の売却行為をマーケティング的な考え方で捉えるのも当然と言える。
<br /> また、長期投資も一種の長期のねずみ講であるとの論は的を得ており投資の本質を突いているし、バブルの発生を、自然の力学に基づく現象として分析し肯定している点も同感である。バブルは外部から規制等の外力が働かない場合の極めて自然な現象との認識である。
<br /> 恐らく、もっとも効率のよい投資(リターン大、投資期間小、リスク小)とは、決して成長段階の最初から最後まで関与するのではなく、自分が登場すべきときにだけ登場して、それが終わるとすぐに舞台から身を引くことなのであろう。これを世間ではうまく売り抜けるというだろうが、実はそこにこそ投資の極意があると思う。
<br /> ちなみに、本書の最後にあるネット株投資は成熟した株式市場への通過ステップであるとの理屈付けは多少偽善的な無理に調子を合わせた感じがする。将来においても、本質的な投資(これは起業的な観点からの事業家的な側面)と、それを側面から成長させる投資(投機)はいずれも必要なのであり、株式市場が前者のみに収束することはありえないと思う。
<br /> 投資とは、常に投機的な側面を有しており、また投機的であれば、そこには必然的にバブル的な現象が発生する。この『投資』と『投機』の二面性(表裏一体)を正しく理解して受け入れることが現実の世界では極めて重要であることを気付かせてくれる本である。
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実際に投資ファンドマネジャーである身からすると、非常に稚拙な株式投資指南書であった。
<br />短期投資が長期投資に勝るという説明がなされているが、それは一概に言えない。
<br />投資の知識のない証券マンの勧める銘柄の長期保有は全く意味を成さないのは賛成できるが、
<br />会社の成長性や財務指標を分析して長期投資する方法は有効である。
<br />一般の投資家が、ファンダメンタル分析をするのを難しいから、短期投資を行う方が良いと
<br />いうのは理解できるが、せめて短期投資で成功している欧米の著名投資家の投資方法を
<br />一部でも紹介した上で、行動ファイナンスを展開してほしかった。
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デイトレードの実践的手法の紹介ではなくあくまで理論的な裏づけを
<br />している本。
<br />・長期保有はリスクが高い
<br />・タイミングが重要
<br />・株はマーケティングと一緒
<br />上記3点のうち最初の2点は他でも論じられるようなことだが、最後の
<br />1点がこの本の主張のポイントかと。短期的なスパンでみたとき、株価
<br />は企業価値それ自体ではなく参加者が企業価値だと思っている価値
<br />に基づいて決定される。つまり株式市場の参加者の期待・心理・行
<br />動パターンを把握する必要があるということでマーケティングと基本は一
<br />緒であると言い切っている。
<br />デイトレードの正当性を理解するには手ごろだしわかりやすいのでお勧
<br />め。バートン・マルキールの主張との相違は、ミクロ経済学とマクロ経済
<br />学の違いじゃないのかな?という気がする。また、ファンダメンタル派とテ
<br />クニカル派の主張は、昔の唯名論と実在論の対立を思わせるなぁ。
<br />最後はファンダメンタルな分析に基づいた株売買があるべき姿であるよ
<br />うな言い方をして終わり。