子供向きの絵本というには、やや、複雑な物語。コーギビルを騒がせた誘拐事件の解決と顛末を、大人でもわくわくさせるように広がりを持たせて展開している。
<br /> ターシャの絵は、精緻になり、沢山すぎるくらいの登場人物(動物?)の様々な表情を丹念に見ていると本当に飽きない。
<br /> 事件の結末について、悪役になってしまったアライグマたちにも、それなりのご褒美を与えておくあたりは、ターシャの全ての動物に対する愛情であるのか、それとも、シャーロック=ホームズばりの「犯人隠避」であるのかは日本語訳からはよく分からないが、いずれにせよ、面白い。事件解決の後と思われる背表紙の絵の美しさと表情豊かな動物たちの様子から、「平和が戻った」事がよく分かる。何分見ていても飽きない絵だと思う。
この本は本家アメリカで出版された物と表紙が違います。<p>いきさつは知りませんが、こちらの方がターシャファンには評判が良いそうです。なかなか挿し絵が完成できずに、編集者をハラハラさせたそうですが、一気に何十枚の絵を描きあげたターシャさんの集中力は脱帽ものです。別の本の解説でコーギービルフェアとは、タッチが変わっているのでターシャさんの眼が悪くなったのだろうかと言う批評を読んだ事があります。ターシャ・テューダー展で原画を見たときも、確かに大分ラフな印象を受けましたが、時間がなかったと言うのも、一つの理由のようですね。じっさいにアライグマを生け捕りにして、スケッチをしたと言う事なので、可愛らしさの中に確かなリアリティが感じられるのも”見たものしか描かない”と、いうターシャさんの信念のなせる技かも。コーギービルフェアを持っている方は、ぜひ読んで欲しい一冊です。また、この本の挿し絵のケイレブくんがテーブルに座っている挿し絵はターシャさんの最も気に入っている作品の一つだそうです。
動物達が楽しく住んでいる村コーギビルでは、急にぞくぞくとコーギビルに集まり始めたアライグマ達の不審な行動が目立っていた。探偵事務所を開いているコーギ犬のケイレブは、油断ならないアライグマ達をマークすることに。<br>そんなある日、コーギビル村の名物の、立派な雄鳥のベーブが誘拐されてしまう!ケイレブは探偵の名にかけてベーブ救出に挑む。・・・<br>19世紀の生活スタイルを徹底しているターシャ・チューダーだけあって、このコーギビルにも懐かしい昔の情緒あふれる景色が広がっています。のどかな村に突如起こった誘拐事件、探偵のケイレブと一緒に事件解決に挑んでいるような気分になります。