この書物についての魅力は先の大将さんとサマンサさんが全てを語りつくしているので私が今さらとやかく言うつもりはありません。
<br /> 金田一といえば、『犬神家の一族』につきるのですが個人的には横溝ブームの仕掛人である角川春樹氏の復帰第一声ともいえるインタビューが一番興味を示しました。
<br /> 以前、何かの話で角川映画公開以前『犬神家の一族』の読者の人気度は1位『八つ墓村』2位『獄門島』3位『悪魔の手毬唄』の次の4、5番人気であることを耳にしたことがあるのですが映画公開以後はみなさんも御存知のとおり現在における金田一シリーズの代表作になりました。物語の面白さでは『八つ墓村』や『獄門島』は決してひけをとらないのですが、なぜ『犬神家の一族』がこれ程までに人気が高いのかと考えると(映像というビジュアル効果も大きいのですが、)やはり主人公金田一耕助に匹敵する以上に個性あるキャラクター・犬神佐清の存在が大きかったのだと思います。黒ずくめの頭巾の下あの強烈な仮面やあと湖の水面から突き出た両脚が何よりも我々に強烈な印象を与えました。
<br /> 余談ですが、シンクロナイズドスイミングで『犬神家の一族』という題目で演舞をやって頂けたらおもしろいだろうなあと思う今日この頃です。
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この本はすごい!
<br />数多い横溝作品を全部紹介。その上、発表年月で整理してあったり、金田一耕助が事件に関わった日付入り年表、金田一耕助のプライベートなどがこと細かに整理されていて、今も集めて続けて読んでいる私にとって、非常に参考になった。
<br />さらにこの本のすごいところは、有名作品の複雑な人物相関図や地図、そして袋とじ『主要10作品犯人・動機・推理』と題して、推理小説の紹介のタブーである犯人ばらしを厳重に掲載している。これも、既読のファンが多いことを前提としていて、改めて小説の雰囲気を思い起こさせてくれる。よくあるファンが書く研究本とは違い、著作権関係の了解をきちんととっているからこそ出来た業だろうと思う。
<br />カラー写真やイラスト、表などが満載。こんなにいっぱい仕事をした金田一さんはやっぱり実在したに違いない。
金田一の研究書と銘打っていはいるが、横溝正史のもう一方の代表的シリーズのキャラである由利麟太郎と人形佐七についての記事にも誌面を割いていたり、金田一が登場しない小説の中からも推薦作を挙げていたりと、オールマイティな横溝ファンへの配慮が嬉しくなる本。<p>勿論本書のタイトルである金田一については登場小説の紹介に始まり、活動事件史一覧の年表や、映像化・漫画化された作品のグラフィティという各媒体ごとのフォローが成されている。小説に出てくる複雑怪奇な人間関係も、おもな作品は家系図や人物相関図を掲載し、読者に分りやすい誌面構成に務めている親切さ。映像化された金田一モノに関してはスチール写真もいくつか掲載されているが、本書で初出となる貴重なスチールもあった。<br>また映画『犬神家の一族』を大ヒットさせ、空前の横溝ブームを仕掛けることになった角川春樹にもインタビューを行なっているが、良くも悪くも時代の寵児となった彼のポリシーが伝わってくる毒舌混じりの記事がユニーク。<br><p>複数のライターが参加している書籍だけあって、部分的に個人の主観が入り、フィルターがかかった記事が散見されたり、データに一部ミスがあるなど痛い箇所はあるが、それもトータル的な完成度から見れば僅かな瑕に過ぎない。<br>表紙に70~80年の角川文庫版のカバー絵を長年担当した杉村一文を起用するこだわり等に、編集部の愛情を感じる渾身の一冊だ。