医療崩壊が、日本人の品の低下による医療崩壊をセンセーショナルに示しているのに比して、日本の医療問題の、もっと根が深い本質を理論的に明らかとしている良書。今までに読んだ中では最も知りたいことが書いてある。医療を、経済で考えない時代も昔にはあったが、これだけ、高度化し、かつコストがかかるようになると、それを、どのように捉え、どのようなシステムを構築するか、しっかりとした分析とコンセンサスが必要なはずである。厚生白書の分析ははっきり言って極めてお粗末でナンセンス。将来的な医療政策を論じるのであれば、これくらいの解析の上に論じてほしいと切に願う。無意味な検診がどれだけの意義があるのか、無尽蔵な高額医療機器の乱立が、医療コストを押し上げている原因の一因でもあろう。彼のような分析が本邦のデータの上になされていけば、無意味な医療費抑制政策ではなく、介護保険まで念頭に入れたトータルな医療政策が立案できるであろう。保険母胎を、県に移管し、診療報酬も県に移管し、厚生官僚はまた天下り先を作るつもりなのであろうか。基本的な生活保障としての医療システム、介護システムを守るために、一人一人が、厳しい目を、立法府に向けて考える必要がある。医療問題を論じるのであれば是非読むべき本である。
医療費高騰の原因について書いてあるようだったので、その辺りを知りたく読みました。原因を分析する上で、きちんとした裏付けが必要なことは分かりますが、初心者にとってはそれが、まわりくどすぎてかえって読みにくくなってます。また医療経済学そのものの説明や、本書とは関係の英語勉強法は個人的には不要でした。1章で全体の総括をするなど分かりやすくする工夫はありますが、それでも読みにくい本でした。本のタイトル通り受け取って「医療経済学」に興味があって読む人にはよい本かもしれませんが…
「抜本的改革を急ぐと執行コストが高くなる」、「信頼性の低い政策研究・提言をもとに、見切り発車的に抜本改革をただちに開始して実施後は十分な評価をせず、数年周期で方向感覚を失った抜本改革を繰り返す」。。。日本の年金、医療、介護、障害者福祉の最近を動きを見ると誠に当を得た指摘です。大いに共感しながら、本を読み進めましたが、どうも違和感がぬぐえません。それは、著者が諸外国のデータを駆使しながら、日本独自のデータにあまり言及していないので、「へ〜外国ではそうなんだ」と参考になるものの、今一訴求力が乏しいのです。世界屈指の年間診療回数、医療の平等性への高い国民の期待、医療への経済的障壁の低さ、医療の完璧性への高い要求水準など、日本医療の特殊事情への言及が非常に薄いように思えました。改革の為の。。。という大上段に振りかぶらず、医療経済学的考え方の入門書、あるいは、ハンディーな医療版「西洋事情」と見るならば紛れもない良書と思えました。