廃墟・魔窟などといったイメージが先行してしまう九龍城だが、この本に載っているのは「人々の生活の場としての九龍城」である。水・電気の供給・警備などの諸問題について住人や業者のリアルな声が収められており九龍城での日々の生活についてのイメージが持ちやすい。写真も他の本では住民退去後のものが多いがこの本では「生前の九龍城」の様子が捕らえられていて非常に興味深い。価格はやや高めだがそれに十分見合った内容だと思う。
自分が建築を勉強をしていることもあって、九龍城の建築的適当さに凄く興味があった。
<br />九龍城は、複数の建物が集まる街でありながらも、それらが無秩序に建設されている事から街というより一塊のボリュームとして存在していた。
<br />建物間の隙間は道路というより廊下であり、その頭上に微かな日の光がのぞいている。
<br />自分としては、各建物間の隙間や城内の路地的な空間といった要素を見たいと思いこの本を買ったが、残念ながらそのような要素を捉えた写真はあまり見受けられなかった。(何枚かはあったが)
<br />個人的に、表紙以上の写真はあまり掲載されていなかったように思う。
<br />掲載されているのは、当時の住民とその住居の写真、そしてインタビュー。ページ数の大半はそれに占められている。
<br />九龍城での住民の生活を知りたい方にはとても参考になる資料だと思いますが、
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<br />九龍城の空間に興味のある方は、他の本を購入されることをお勧めします。
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香港に在住していたカナダ人カメラマンが、香港に住みながら丹念に撮影した九龍城の写真集。かつて、魔界、犯罪地帯と呼ばれた九龍城を愛情込めて撮影。撮影者は欧米の一流雑誌で仕事をするフリーカメラマンだけあって、写真の迫力、美しさは特筆モノ。香港フリークにはぜひ、おすすめしたい。ちなみに、九龍城は取り壊され、陳腐な公園になってしまっている。よって貴重な記録でもある。(松本敏之)