今まで、認知科学、ヒューマンインタフェース、脳といった分野の本を色々読みましたが、
<br />どうしても”学術書”という硬い印象が拭えず、読んでてぎこちない感じがしました。
<br />しかし、本書は非常に面白く、どんどん読み進むことができます。
<br />上記分野に興味がある人の入門書としてうってつけだと思います。
<br />既に専門とされている方は、ライトノベル感覚で読んでみてはいかがでしょうか。
脳の働きを、脳科学に関する解説と誰でも出来る実験によってそれを検証した野心的な試みの本。本書を読めば、脳がいかにいい加減システムか(言い換えればいかに柔軟か)がよく理解できます。例えば、連続して動く物体の移動について、人間の脳は1秒につき約5回の頻度で実は見ていない瞬間が実はあるそうです。物体の動きを滑らかに把握するために獲得した進化上の工夫なのですが、本書はこのような知見を体とそしてWebの画面を使って実際に実験(Hack)してみせます。他にも「聴覚」や「推論」「人間関係」に至るまで多彩なテーマで脳の働きに迫ります。
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ヒューマン・インタフェースのデザインの解説書は、本来は人間の認知を扱っているものだから、面白い(=興味深い)ものであるはずなのに、なぜだか無味乾燥でした。でも、本書は面白いです。10年以上の歴史があるWWWでも、未だに「どうすればいいの?」「何をさせたいの?」というサイトは多いですし、日用品や家電製品でも、不親切なデザインが数多くありますが、本書のようなアプローチで、使用者(ユーザ)の特性を熟知した上でデザインすれば、「IT」が便利な「道具」になれるように思いました。