米国の製薬業界、医療行政の問題点を指摘した本の翻訳本であり、非常に詳細な状況まで述べられていて大変面白い。心配するのは製薬業界だから米国も日本も同じという解釈にたった上での理解が一人歩きすることだ。本書の注釈でも日本の状況についてもコメントされているが、説明不足のところは多い。世界の医薬品市場で一人勝ち状態の米国製薬業界に追いつけと目指す日本の製薬業界への警鐘としては理解できるが、自由に薬価を設定できる米国と公定価格の日本では根本的なところが異なる。日本で奨めようとしている規制緩和を逆戻りさせる論調になりはしないか心配なところである。これらの議論のうえに日本の製薬業界をどうするという本が出ることを期待する。
本書では、以下の論点が丁寧に整理されている。
<br /> 1.製薬業界の生産性の低さ
<br /> 2.マーケティング費の大きさ
<br /> 3.R&D費とれているものの中でマーケティング目的の市販後臨床試験の割合が高いこと
<br /> 4.製薬業界の議会に対する影響力の強さ
<br />欧米礼賛の製薬業界に一石を投じる書であることは間違いない。
製薬=医薬品の開発競争を描いているが、日本の企業は参戦すらできない状態にあるのかもしれない。
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<br />NIHによる研究が、製薬産業に掠め取られてるとの指摘があるが、反面これは、米国の基礎研究への注力・層の厚さ、またその成果を感じるばかりである。
<br />本書の指摘は、大学の基礎研究・バイオベンチャーなど揃った上での課題であり。米国での産学協同の歪な点を読み取る以前に、日本がこれから前提となる環境なくして、新薬開発競争に勝てるか不安である。
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<br />行き過ぎた新薬競争の米国に対し、数年遅れでその新薬やゾロ新を発売する日本は、ビックファーマを批判できるのであろうか?
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<br />本書は告発書であり同時に、新薬競争の米国の勝利宣言である。