認知症というと、何だか30代の働き盛りの人間にはまだ遠いと感じかもしれないが、実はそんなことは決してない。両親が認知症になることはないだろうと思いきや、万が一なるとしても、まだまだと思い、しかしいつかとも言えず、何の否定も確証もないのだ。ただその日が来てから、あ、これは認知症だ!と分かるのか、それとも本によって多少なりの知識をもち、対応するのとは自ずと結果は異なってくるだろう。この本は”認知症”を基本として書いてあるが、そういった視点だけで本を読み進めるだけではなく、認知症ではない人間を基本にして読み進めることも十分できる。つまり認知症だから、ということではなく、普遍的に人間として、生きている人間とどう対応し、どう自身の対処を行っていく必要があるのか、ということをも伝えている。挿絵もとても可愛いので、途中途中の一息が楽しい。介護は大変なので、心からリラックスできる何かを支えもつ、という意味でこの挿絵は物語っているように思える。
介護は自分ががんばるのではなく、相手を応援することが大事。でも、忙しいと、自分ばかり頑張って、認知症の人はされるがまま取り残されてしまうこともあります。ケアは頑張ることではなく、相手と理解しあうこと。とっても素敵なことだということを教えてくれる本です。絵もほのぼのしていて、気持が疲れた時にすぐ手にとれるよう、側に置いています。
認知症の介護のために― というタイトルの本書ですが、すべての人間関係で、とくに保育や教育の場でも共通する一番大切な自己他者尊重がとても読み易く書かれています。人が人と関わる時の原点、暖かい愛と優しさを穏やかに再確認させてくれるこの本が沢山の人に読まれますように。装丁やレイアウトも素敵です。