映画『硫黄島からの手紙』を観て 『栗林忠道』という方に、興味を持ち 栗林さんに関する書籍を色々読んでみましたが この本が 一番 ぴたっと来たように感じました。文体は、当時の表現で やや読みにくい所もありますが それだからこそ 当時の様子が 良く分かりやすく伝わる書籍でした。 お値段は 少しお高いですが お勧め本だと思います。
硫黄島戦で敵をトコトン苦しめ、現在にいたるまで米軍から尊敬を受けている栗林は、米国駐在武官経験がある知米派で、日米開戦には反対の立場であった。同時に中将は、楠正成を尊敬する典型的な日本武士でもあった。
<br /> この種の本が出ると「良識派の言を取り入れなかったか愚かさ」という方向で、過去の歴史を現在の基準で非難する内容となるものだが、留守教授はそういう立場をとっていない。教授の批判精神は、日本人の気質に向けられている。その意味で本著の内容は普遍性が高く、特に指導者が読むべき内容となっている。
<br /> 栗林をつぶした当時の日本がもっていた「その場しのぎ」「前例墨守」気質は、今も全く変わることなく残っている。その意味で現在をみつめる本でもある。
<br /> それにしても、当時の国家・軍指導部には、栗林を「最後の切り札」として残すだけの見識があった。果たして今のわが国にこれだけの見識・軍事常識はあるのだろうか?
昭和20年3月17日、栗林忠道中将から硫黄島を護る将兵に対して、無電「全将兵ニ告グル命令」が発せられた。アメリカ軍の上陸から27日を経ていた。命令は「戦局ハ最後ノ関頭ニ直面セリ」ではじまり「予ハ常ニ諸子ノ先頭ニ在リ」で結ばれていた。表題となったこの言葉に、栗林忠道中将の生き方が込められていると思う。
<br />著者は本書で硫黄島戦における栗林中将の姿を表すために膨大な資料と取材を重ね、日本の国民性や世情の分析、中将の郷土(松代)の歴史や生い立ち、氏の経歴、思想的な背景を検証して、栗林中将の気高く、強靭な深い精神性を描くと共に、アメリカの凄さを知り、知的探求から来る徹底した合理性を兼ね備え卓越した将軍としての姿を表している。本書は誠実なる大作である。
<br />硫黄島戦、日本軍21000将兵の最高司令官が発した「常ニ諸子ノ先頭ニ在り」の言葉が真実として深い感動とともに胸に残った。尊敬すべきリーダー論としても、時代の変化に対しても変わらず価値を有してゆくであろう。
<br />尚、著者の日本の世情を憂うる心情と国を愛する想いも強く伝わってくる書であった。
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