内容が同じようなトヨタべた褒め本が数多く出版されている中で、ちょっと違った視点でトヨタを書いている点で、楽しく読むことができた。
<br />しかし、内容的には、あまり深い部分までは書かれておらず、その点で満足度は落ちます。
<br />ページ数が少なくすぐ読めるので、違った視点で捉えたトヨタを短時間でおさえるには良いでしょう。
私はこの本と「パソコンメーカーの挑戦」を読んで時代の最先端をいく企業はグローバルに競争をするためにはトヨタや富士通のようにしなければならないということがよくわかった。
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<br />その活躍する場所がグローバルであること、そして生産する商品が短期間につぎからつぎへと変ることから、トヨタのカンバン方式と富士通独特のジャストインタイムという流れは自然であるように思う。
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<br />問題は、いったんこのことを受け入れて、その次の段階でどのようにして人間性を回復するかを考えることである。
<br /> 「電通」と並んでマスコミ界で“タブー化”しつつあるのが、営業利益1兆円超(06年3月期の連結業績)を誇る「トヨタ自動車」ではあるまいか。その「トヨタの正体」を文字通り暴き出したのが本書であろう。確かに「いい所取りのケチな会社」(本文)という程度ならば、黙殺もできよう。だが、当書にあるごとく、愛知万博等で「公的資金を食い物」にし、巨額の広告宣伝費を盾にマスメディアをも萎縮させるなどのトヨタの横暴には断じて歯止めをかけねばなるまい。
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<br /> さらに、「トヨタ(の生産−引用者)方式は地方自治体や郵政公社など製造業以外にも広まりつつある」のだが、「しかし、労災や自殺といったマイナス面にも目を向けた上で、導入に値するかどうかの判断を下すべき」(同)であろう。そして“ヨイショ”するわけではないけれども、「トヨタが変われば、日本が変わる」(若月忠夫全ト・ユニオン委員長)というフレーズは真実であろう。少なくとも「トヨタの常識は社会の非常識」という汚名だけは返上してもらいたいものである。