ストーリー構成や登場人物の心理描写の上手さ、魔法の魅力、背景や情景などを想起させる力など、どれをとっても児童文学作家としての確かな筆力をローリング氏は持っていると私は思います。
<br /> 特に素晴らしいと思う部分は「魔法」の扱い方です。近年のアニメや漫画などを見ていると、努力をすればなんでも―あるいは努力をしなくても―「魔法」のような力で敵をばったばったとなぎ倒したり、自分を高めたりしている姿がよく見て取れます。しかし本シリーズでは「魔法」はそのような無限の力を与えられておらず、最高の魔法使いとされるダンブルドアでさえ、できないことが沢山あります。ポッターと同じ少年の魔法使いが登場する物語として有名な『ゲド戦記』や『マーリン』シリーズも同じような魔法観をもって編まれているという点で、個人的に私はどれも気に入っています。
<br />
<br /> 日本人の我々にとって、カタカナ表記の登場人物が矢継ぎ早に登場してくると、誰が誰だかわからなくなってしまいそうですが、映像化がある面で成功している本シリーズではその心配はないのかもしれません。
<br />
<br /> 以上のように概ね本作品には満足しているのですが、如何せん話が長すぎるのではないかという印象も否めません。長い文章に慣れ親しんだ大人ならば、それほどの長さは感じないかもしれませんが、本作品が読者の対象に含んでいるであろう子どもに対しては、「飽き」をもたらしてしまう可能性が高いのではないでしょうか。また使っている言葉もやや子どもにとっては難解であります。せっかくここまで大人にも人気があるのですから、子どもに対する配慮をもう少ししていただきたいところです。
<br /> 二冊組にして、長さもさることながら値段も児童書としては、かなり高い。この点も子どもを持つ家庭への配慮として、出版社が考えなくてはいけない部分であると私は思います。
ハリーが大切な人を失って、自分の感情を爆発させる場面は本当に泣けてきます。
<br />今回はハリーの感情の起伏が激しく、周囲の人に対しても当たってしまいます。
<br />でも、理想のヒーローを期待してはいけません。
<br />高校生くらいの男の子が悩んで、傷ついて、大切な人を失っても、成長していく物語なんです。
<br />そこに共感できないと、多分面白くないでしょう。
<br />
<br />ダンブルドアが、ハリーに真実を伝えるのをためらった理由はちょっと苦しいと思います。
<br />すでにハリーは、死ぬほど危険な目に度々あってきたのですから、所詮、ヴォルデモートと
<br />対決するのは避けられません。
<br />真実を早く伝えて身を守る術を教えるのが、自然の流れのように思えます。
<br />そうすれば、ヴォルデモートのワナに易々とはまることもなかったでしょう。
<br />(ストーリー上そういう展開になる必要があったんでしょうが)
<br />ダンブルドアが自責の念にかられるのも理解できますね。
<br />
<br />かつてヴォルデモートと戦った大人たちが勢ぞろいしたり、アンブリッジ撃退のため、
<br />ウィーズリー兄弟を始め生徒や先生たちが”レジスタンス”活動をしたり、政治的な
<br />思惑でダンブルドアが苦境に陥ったりと、いろんな物語が詰め込まれています。
<br />いつもは、ぼ〜っとしている脇役ネビルが活躍しますが、その理由も明らかになります。
<br />
<br />子供向けというには、ちょっと複雑な内容になってきてますね。
<br />大人も楽しめる冒険小説といっても良いかも。私はシリーズ中最も楽しめました。
<br />
盛り上がりの場面が少ないまま、話が進んでいきます。不要としか思えない場面が延々と積み重なった感じです。最後はここまで読んできたんだからという義務感で読み終わりました。
<br />
<br />重要人物の一人が亡くなるわけですが、そこにいたる経緯が不自然すぎて、話の都合上で消されてしまった感じしかしませんでした。
<br />
<br />4巻で面白くなくなってきたなと思った方は読まない方がいいと思います。さらにつまらなくなっています。あらすじだけわかれば、そのまま6巻に飛んで読んでも、特に不都合はないと思われます。