いわゆる“おしゃれ系”ではなく、普通に街角や旅行先で印象的なポートレートを撮りたいと思う人は多いと思うけど、ドキュメント系の商業カメラマンの貴重なアドバイスが詰まった本は意外と少ないのではないでしょうか。この本の面白さは、小さい冊子ながらどれも最高の手本が示されているうえ、写真を撮るにあたってのコミュニケーションの大切さや心構えまでエッセーとして書かれています。そして一流のカメラマンが写す人に向ける謙虚な眼差しと愛情の深さとに触れ、読むたびに心温まる感情が湧き起こる不思議な本です。細かいテクニックや機材の説明は書いてありませんが、健全な心で写真を撮るという普通のことに気持ちを向けることのできる良書だと思います。
ナショナル・ジオグラッフィックを1年間定期購読したことがある。すべての写真が「完璧」といえるほど高い完成度を誇っていてカメラマンのレベルの高さを物語っていた。その「ナショジ」のカメラマンの一人が書いた本。
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<br />一般の撮影テクニック物(日本カメラとか)などのありきたりの本とは明らかに一線を画す濃い内容。構図に始まって、ライティング、街角での撮影ノウハウ、他の写真家からのアドバイス、そしてポートレート、環境ポートレート(この言葉は初めて聞いた)、グループポートレート、家族をテーマにした写真、フォトエッセー。豊富な経験のある世界的なカメラマンにしか語れない、長い経験に基づく重みのある一言一言。変わったことは言っていない。当たり前のことを述べているだけだが、非常に納得させられる。とにかく大事なのは、「考えて撮ること」。構図にしてもライティングにしても、撮影意図をできるだけ表現できるように考える。これに尽きるようだ。