八篇からなる漫画短編集でハーカバー。
<br />すべての話に共通するには、あまり目的も無い散歩の途上で、
<br />一人の男が色々な発見をするという事だ。
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<br />その発見は、どれも他愛の無いものだ。
<br />しかし、男にとっては、大きな発見であり、
<br />ありったけの郷愁を表現している。
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<br />特になるほどと思ったのは、最終話「目白のかき餅」だ。
<br />一人の作家の壮絶な癌闘病記で、絶筆となった「死にたくない!」を取り上げ、
<br />死に直面した時、最も行いたい事は「散歩」だと指摘する。
<br />散歩という行為が身近過ぎる間は、その真価を評価しにくい。
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<br />東京の下町の風情たっぷりに描かれる。
<br />散歩という行為のエッセンスが詰まっており、
<br />しみじみと味わえる。
「孤独のグルメ」の名コンビがその持ち味を発揮して、安心して読める作品となっている。ただ、「食べる」ことの魅力を存分に描いた前作と比べると、少しインパクトに欠けるか・・・
’03から’05年に「通販生活」に連載された作品を単行本化したもの。傑作「孤独のグルメ」を生み出した久住昌之原作である。主人公は文具メーカーに勤務するサラリーマン上野原。妻あり。子どもはいないようである。年齢は40歳前後か。
<br /> この作品は彼の日常、それは外勤中であったり休日だったりするのだが、立ち寄った場所をスケッチした短篇8話が収録されている。その場所は公園だったり商店街の本屋だったり夜の住宅街だったりと、孤独のグルメよりさらに”日常”が協調された作品である。谷口ジローの絵もこれにあわせて黒(ベタ)は殆ど使わず淡色の水墨画のようである(主人公の髪の色もスクリーントーンを使っている)。
<br /> エッセイというよりも日本語の”随筆”という言葉がぴったりな大人のマンガである。この作品の原作の過程を記した久住昌之のあとがきも良い。