この方の本はどうも読んでいると腹が立ってしまうけれど、まあそれは自分の浅学があちらの衒学をうらやんでいるのかも知れません。
<br />それはさておいて、ジャズの現情況をこんなに考えている本は他にあるかなと考えるとあんがい思い浮かばないのです。クセのある冗談に閉口することはあれど、きちんと読めばジャズに対するおもしろい見識があらわれるような気もします。
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前書に「受動的な読快性などによってドライブすることなどできない、かなりの魅力と、それを上回る難解さを備えた本」とあるように、上巻(ハンディで分かり易く楽しい本)が一般教養課程だとしたら、本書は専門課程、ゼミの趣きである。「感動と信用は甘い菓子だ。だからあんまり喰うな」の裏テーマ通り、おいそれと分かったふりなど出来ない内容になっている。上巻が「歴史」という縦軸だとしたら、本書は「ジャズの幅、キャパシティ」という横軸であり、「ジャズ」に対する新たなパースペクティブが提示される。「未来のジャズ史が編まれるときに、避けることは絶対にできない」と著者は言うものの、「ブルース」「ダンス」「即興」「カウンター/ポスト・バークリー」という章立てはかなり新鮮。まるで“笑いながら怒る人”のように二項対立が混在し、「ソリューション」(解決)はないけど「レゾリューション」(決断)はあるっていうブルースの世界観は、ある意味今っぽい。「即興」の章で触れられている、「ミニマルになったオルガスムス」あるいは「演奏は終わらない」といった音楽の終止の概念も興味深い。でもまぁ一番目からウロコだったのは「ダンス」だよなぁ。既成概念のジャズ観からもっとも遠いところにありそうに思えるダンスって要素が実はキモ!ってのは、まさに言われりゃその通りであり...これが既存のジャズ、ジャズ評論の画龍点晴なんだなぁって。もうさっそく本書で紹介されていた「黒人リズム感の秘密」取り寄せちゃいました。「カウンター/ポスト・バークリー」の濱瀬元彦氏の講義は門外漢にははっきり言ってさっぱり理解不能だったけど、「分からないぞってことが重要」って濱瀬氏の言葉を真に受けときます。分からないのに5つ星付けるのはおこがましいので4つ星ってことで!
前作(歴史篇,青本)が某大手書店系アワードで5位を獲得するなど,
<br />JAZZ界のみならず,音楽,ファッション,格闘技,美食等あらゆる
<br />テーマで活躍する,いま最も注目を集める才人・菊地成孔さんの「東大
<br />アイラー」シリーズ,待望の新作です。
<br />大陸前からのファンも,陽水以降の方も,革命舞踏会後の方も,格闘技
<br />ファンも,J−POPファンも,アニメファンも,とにかく必読です!