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ギャンブルと数学(確率論)数学者というと お金のことなどには興味がないようなイメージがありますが、実際にはそんなことはありません。数学者にはもしかしたら実際そのような人が多いのかもしれませんが、数学自体は経済や産業ともっとも関連のある科学の一つです。例えば、ここに挙げる確率論はギャンブルともっとも密接な関連のある数学だといえます。そもそも確率論が出来た経緯が、ギャンブルに起因しています。 確率論の歴史的発端は、※1パスカルとその友人のシュバリエ・ド・メレの間の議論に始まります。 ある日、メレは賭博に関するある疑問を友人であるパスカルに伝えました。それは次のような疑問です。 AとBとの間である賭けをしていた。その賭けは最終的に買った方が全ての賭け金をもらえるギャンブルである。もしも、このゲームを途中で止めたとき、中間結果を見て賭け金をどのように配分すればよいのだろうか。 上記の問題を、より具体的に考えてみます。 例えば、AとBとの間でコインの裏表にかける賭けをしていたとしましょう。お互いに10万円を出し合って、先に3勝した方が勝ちであるとします。(つまり、20万円を得られます。)勝負が進み、Aが2勝、Bが1勝したところでゲームが中断されました。このとき、賭け金であった20万円はAとBにどのような割合で分配したらよいかということです。 一つの考え方として、まだ、勝負はついていないのですから、10万円ずつ、A、Bそれぞれにキャッシュバックするという考え方があります。ですが、これでは、2勝しているAの方から不満が出ることは必至でしょう。 また、Aが2勝、Bが1勝しているので、2:1でお金を分けるという考えも浮かびます。けれど、これでは、Bが0勝だったとき、Bの分け前が0になってしまいますので適切とはいえません。 そこで、パスカルはこの問題を解くのに確率と期待値の概念を導入し、鮮やかに問題を解決しました。 この場合、A、Bが一回毎の試行で勝つ確率はそれぞれ1/2ずつになります。勝負が続行されたとして、次の勝負でAが勝てば3勝1敗でAの勝ちとなります。また、次の勝負でAが負けた場合、AとBとは2勝ずつになりますので、この後にAが勝てば、3勝2敗でAの勝ち、Bが勝てば2勝3敗でBの勝ちです。つまり、Aが負けた場合には、その次の勝負で必ず、勝負がつきます。 Aが最初に負けて次の勝負で勝つ確率は1/4であり、Aが最初に負けて次も負ける確率も1/4です。 従って、Aが2勝1敗の段階で、Aが最終的に賭けに勝つ確率は、3/4であり、Bが最終的に勝つ確率は1/4になります。 よって、Aが2勝1敗の段階では、Aが3/4の確率、Bが1/4の確率で勝利することが予想されるため、Aが得られるお金の期待値は EA=20×3/4=15万円、EB=20×1/4=5万円になり、Aに15万円、Bに5万円支払うのが、妥当だという結論になるのです。 パスカルはその後、※2フェルマとの手紙の交換を行い、確率論をさらに発展させます。その議論が現在へと受け継がれ、今日の確率論が築かれました。 そのほか、ガリレイやカルダノなどといった人たちが確率について考えていたと言われています。が、それらは全てギャンブル(賭け)に関するゲームについての考察から始まっています。 ※1 パスカル(仏):パスカルの原理、パスカルの三角形などで有名な数学者、物理学者。人間は考える葦である。という言葉でも有名です。 パスカルの原理:気体や液体など流体の一部に力を加えたとき、この力があらゆる方向に同じ強さで伝わること。 パスカルの三角形:(a+b)nを計算して展開式に現れる各項の係数を並べたときに得られる配列を表した図。 参照:パスカルの三角形(C)パスカルの三角形 早苗雅史様 ※2 フェルマー(仏):1995にアンドリューワイルズ氏によって、解決されたフェルマーの定理で知られます。 フェルマーの定理:nが2より大きい自然数であれば Xn+Yn=Zn を満たす、自然数X、Y、Zは存在しない。 ギャンブル:賭博の歴史とその種類
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