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「アマゾン ドットコム/amazon.com」(ロバートスペクター)、書評本書は、同社アマゾンの起業の過程を追っているビジネス書である。 総合オンラインショップとして、既に高い地位を獲得しつつあるアマゾンドットコムの起業から成長拡大の過程を、当時、関わった人からのコメントなどを取り入れながら詳細に描いており、アマゾンが現在にいたるまでどのように成長してきたかが良く分かる。(ただ、残念ながら、ベゾス氏本人のコメントを取ることについては断られてしまったようだ。) アマゾン ドットコム/amazon.comはジェフリー・ベゾス氏が興したオンライン書店である。現在では、書籍のみならず、音楽、DVDなど多彩な品物を取り揃えた総合オンラインショップになりつつある。 現在、アマゾンは日本でも事業展開しており、短期的な利益よりもより早いシェアの拡大を狙ったGet big fast戦略が本書の副題にもなっている。実際、初期の頃は売上を異常なペースで伸ばしていたが、それと同時に赤字もすさまじい速さで広がっていったことが本書により読み取れる。その赤字を無視しても、シェアを取ることが初期のアマゾンにとって至上課題だったのだ。赤字企業だったにも関わらず、アマゾンに対する投資家の評価は非常に高く、1999年の時点で、ベゾス氏の資産総額は5,740,000,000ドルだったそうだ。 本書でも取り上げられているが、アマゾンの戦略で最も有名なものの一つにアソシエイトプログラムがある。 アソシエイトプログラムとは各ホームページで本の宣伝をしてもらい、アマゾンでの売上に対して、5%〜15%(日本では、3%〜5%)の紹介料を支払うというものであり、現在のアフィリエイトプログラムの先駆けであるといえる。アマゾンは、このアフィリエイトプログラムによって、自らのホームページで自社を宣伝してくれるたくさんのWebmasterを味方につけたのだ。このやり方は、現在、アフィリエイトプログラムとして多くの会社で取り入れられている。(あまり知られていないことだが、マイケルデル氏が経営するデルコンピュータは、アマゾンがオンライン販売で赤字だったその頃、既に利益を上げていたそうだ。) また、一昔前、アマゾンが取得したワンクリック特許に対し、GNUプロジェクトのリチャード・ストールマン氏が、反対運動としてアマゾンボイコット運動を行ない、話題となった。 アマゾン・コムが「ワンクリック」特許訴訟で和解によれば、アマゾンとバーンズ&ノーブル社は既に和解をしているようなのだが、ワンクリック特許自体がどのような扱いとなったのか、詳しいことは不明である。 いわゆる起業成功物語の一つとして、また、起業の際の考え方に対する教科書として、面白いのではないだろうか。
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