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「暗黒童話」(乙一)、書評暗黒童話は、「夏と花火と私の死体」や「ZOO」などで知られる乙一さんの初の長編小説。 簡単なまとめから書き出そうとすると、その要素の多さにびっくりする。 なので、ここでは、そこに描かれている殺人の部分に特化して記述することにする。 殺人を犯すとき、それ自体が愉快で、殺人にのめりこんでいる。という殺人者は怖い。 けれど、殺人というものをほかの現象と区別せず、ただの事象として観測できるという殺人者も別の意味で怖い。 乙一さんが描く殺人者は、後者であることがとても多い気がする。 どんなに生き物を切り刻んでも”痛み”を感じさせることのない犯人。 欲望に駆られて、ということではなく、特に理由もなく、というところが、基本的にとても怖いのだ。 「バトルロワイヤル」で、主人公の3人の敵として 幼いころから性的な虐待を受けて、その体験から感情的にドライになった少女。と そもそも、そういう感情自体を持ち合わせていない少年 がいたけれど、その後者によく似ている 倫理的な柵というか、境目自体がそもそもないのだ。 だから、ためらいもないし、動揺することもない。 それが、多分、すごく怖い。
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