蟻 ベルナールウェルベル
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「蟻」(ベルナール ウェルベル)、書評

 読書が好きな人間にとって、ふと手にとった本が、思いのほか面白かったときほど、楽しいことはない。

 本書「蟻」と続編である「蟻の時代」もそんな本の一つである。

 筆者は、科学ジャーナリストとして活動しながら、13年の構想の後、本書を執筆したそうだ。

 物語は、蟻の研究をしていた生物学者の伯父エドモンから遺産を受け継いだある人間の家族の視点。

 エドモンの残した、ただ一冊の本である「相対的かつ絶対的知識のエンサイクロペディア」の引用。

 そして、赤蟻の国ベル・オ・カンやその周辺の王国にすむ何匹かの蟻の視点。

 という三つの視点で交互に記述される。

 蟻は人間と並んで、複雑な社会を形成する。

 そこには、農耕や牧畜、奴隷制度すらあり、フェロモンと呼ばれる匂い成分により、お互いに意志も通じ合えるのだ。

 最初ばらばらだったそれら三つの視点が、最後に全て一つにつながる。

 文中には、筆者の蟻についての豊富な知識が随所にみられる。

 本書を読んでいると実際、蟻は本当に人間と同レベルの知性を持ち、このような社会を持っている気がしてくる。

 上下巻があるにもかかわらず、読み始めたら止まらない、相当に面白い小説の一つである。

 

 この書評を書いている時点で、残念ながらAmazon.co.jpで取り扱っていませんでした。ですが、現時点でBOOKOFFには在庫があるようです。(この本を扱わないのは、正直かなり不思議です。)

 ●2003年7月16日追記 上記について訳者である小中陽太郎さまから直接のご連絡をいただきました。小中様によりますと、Amazon.co.jpに本書がなかったのは、版元がなくなったためだそうです。このたび、角川文庫から改訳されて出版されたそうなのでぜひ読まれるとよいと思います。

蟻 ベルナールウェルベル

蟻―ウェルベル・コレクション

ベルナール ウェルベル

1962年〜、フランス。雑誌”Le Nouvel Observateur”の専属科学ジャーナリストを経て、本書『蟻』で作家デビュー。

  
 
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