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「生きるってなんだろう―ホームレスだったぼくからきみたちへ」(松井計)、書評この本はもともと小学生高学年から中学生を対象としたいわゆる児童向けの書籍である。 著者である松井計氏は、「ホームレス作家」という著作で話題となったいわゆる現役の作家である。 出版の予定があった本が企画が停止になったり、妻が病気になったり、様々なトラブルが重なって現役の作家であったにもかかわらず、ホームレスを経験されたのだ。 本書は、その経験をもっと子供にわかりやすく記述した本であり、まさに子供に話しかけるようにやさしい口調の文章になっている。 ホームレス作家では、ホームレスになってからの氏自身の心理描写や思考の過程を描くということに主眼が置かれていたが、本書では、むしろ、ホームレスという問題を子供たちに身近なものとして伝え、どうすればいいのか考えさせるような内容になっている。 ホームレスというのは、特別な人ではない。一人一人が個性を持った同じ人間なのだというメッセージ。 ホームとは、家族がいて初めてホームなのだというメッセージ。 この二つのメッセージが本書における大きなメッセージになっている。 児童向けであるため、本書は四十数ページの薄い本であり、ホームレス作家のような厚い本を読むのが少しためらわれる人によいかもしれない。
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