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「Itと呼ばれた子」(デイヴ ペルザー)、書評吐き気のするような悪というものは、この世の中に確かに存在する。 「幼児虐待」もまた、そんな目を背けたくなるような悪の一つである。 本書は、母親からIt(それ)と呼ばれた著者が自身の幼児期の体験をつづった自叙伝である。 殴られる、けられるなどの暴力はもちろん、ナイフで刺される、アンモニアや漂白剤を飲まされる、食べ物は食べさせてもらえない。 そのような目を背けたくなるような仕打ちが本書を通して、これでもかというぐらいに現れる。 物心付いた頃には、優しかった母親。 それが筆者が4,5才の頃には、上記のような鬼のような母親に変わる。 子供だった著者の視点からは、突然変わってしまった母親に何があったのかは分からない。 (ただし、若干ではあるが、母親が精神を病んだと思われるエピソードが本書中に記述されている。) 本書には、同一の作者による続編や類書がいくつかあるようなので、そちらの本で謎が解けるかもしれない。 とにかく、幼児虐待の現実を知る上で、避けては通れない一冊であろう。
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