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「幼な子われらに生まれ」(重松清)、書評

 重松清氏は、「口笛吹いて」や「舞姫通信」、「隣人」などの作品で知られる直木賞作家である。

 主人公は、妻の連れ子二人と暮らし、離れた場所に別れた妻と暮らす一人娘がいる一人のサラリーマン。

 いわゆるバツ一の夫婦の生活を通して、家族の形について考えた一冊である。

 物語はバツ一の夫婦に新たな家族が、その子が生まれるまでの家族を追っている。

 一緒に暮らしながら、血のつながらない者たちの集団。

 あなたは父親じゃない。部屋に鍵をかけろという継子。

 心の芯の部分でお互いに心を通い合えない妻。

 そんな家族にうんざりし、時に心が折れそうになる主人公。

 私たちが生きていく上で背負わなければならない哀しみの一つ。

 それは、

 どんなに誰かの近くにいても

 どんなに誰かと話し合っても、

 その芯の部分では決してその誰かを理解することはできないということ。

 そして、その悲しみを背負いながらも、なお人と共に生きなければならないとき、

 そして、そのような状況にもかかわらず、相手が自分のことを拒絶することを選んだとき、

 私たちはその誰かのために何をしてやればよいのだろう。そして、何をしてやれるのだろうか。

 例えば、本書は人のそんな悲しみについて語った本である。

幼な子われらに生まれ

幼な子われらに生まれ(単行本)

幼な子われらに生まれ(文庫)

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出版社/著者からの内容紹介
三十七歳、サラリーマン。実の娘と年に四回しか会えない彼に子供が生まれる……。血のつながった他人、血のつながらない家族−−幾つもの絆、幾つもの哀しみの中に浮び上がる「家族」の姿を描く長編。

内容(「BOOK」データベースより)
離れても、決してほどけない絆。ボロボロになっても、ほどいてはならない絆。どちらが欠けても、あなたは幸せとは云えない。"わたしたちは、ほんとうに家族なのか?"幾つものつながり、幾つもの哀しみのなかに浮かび上がる「家族」の姿―。

  
 
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