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「男の戸籍をください」(虎井まさ衛)、書評性同一性障害(gender identity disorders)。 gooで辞書を引くと次のような意味と出てくる。 性に関する精神障害の一。自分の解剖学上の性に対して不快感やそぐわない感じを持ち,反対の性になりたいと強く望むもの。GID。 そう、それは、遺伝子上の性と、意識上の性が異なっているという障害である。 本書は、実際に性同一性障害者の一人である著述家の虎井まさ衛さんが戸籍を女性から男性へと変更するにいたるまでの裁判やその過程を、GIDの現状なども含めてつづったノンフィクションである。 読みながら、様々なことを思う本である。 意識として男という意識を持っていながら、遺伝子的には女としての性を持っている。 そのような人が、戸籍という問題でどれだけ不都合を生じるのか、体験者のつづるノンフィクションだけに非常によく分かる。 もちろん、本書の意図は、そこにあるんだろう。 だが、そのような社会的な問題だけでなく、人間の意識というのが如何に微妙なバランスの上に成り立っているのかということも考えさせられた。 幼少期のホルモンバランスが、男脳、女脳の生成に決定的な影響を与えるという。 よく、精神が肉体を支配しているとか、人間を形作るのは精神だとか言うし、実際、僕も結構そう思う。 しかし、自分で決定していると思える人の意識というものは、実際のところ、どれほど確かなものなんだろう。 なお、現在では、実際の障害の一つとして認知され、2003 年(平成 15)に制定された性同一性障害特例法により、一定の要件を満たせば、家庭裁判所の審判を経て戸籍上の性の変更が可能となっている。
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