複雑系入門
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出版社/著者からの内容紹介
【本書「はじめに」より抜粋】
『複雑系』科学で行われていることの面白さを少しでも多くの人と共有したい。それが本書の目的である。
現在、書店に行けば『複雑系』に関する紹介書が多く出版されている。そのような状況の中で、あえて本書を書く必要があると感じたのには二つの理由がある。まず一つめの理由は、てごろなレベルの入門書がないということである。現在出版されているものは大きく分けて紹介書・啓蒙書か、あるいは専門書のどちらかの類である。しかも紹介書から専門書への距離が遠すぎ、ちょうど中間が抜け落ちている。もう一つの理由は、人工生命から経済学までの広い分野を取り扱う入門書が重要であるにもかかわらず、ふつうその実現が難しいということである。なぜなら、現在『複雑系』に取り組んでいる研究者は既に特化した研究領域をもっており、専門外の発言には慎重にならざるを得ないからである。
本書は『複雑系』の初心者から中級者までを対象とし、概念の紹介から具体的な手法までを取り上げる。また『複雑系』に関する包括的な標準入門書とするために、なるべく多くの幅広い議論を盛り込んだ。目的に応じた文献の紹介も行い、『複雑系』の勉強・研究のファースト・ポインタとして独学にも教材にも活用できるように心がけた。しかし、是非本書で終ることなく次のステップへと進んでほしい。本書を入門のきっかけとして、読者が専門書や実際の論文へと進んでくれるならば著者としてこれ以上の喜びはない。
本書は1997年春に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスにおいて行った「複雑系勉強会」での講義に基づいている。計9回行ったこの自主的な勉強会には、コンピュータ・サイエンス、認知科学、経済、政治、建築、言語、アートなど幅広い興味をもった学生約50人が参加した。さらに、その後行ったいくつかの研究会や研究所、サークル等での講義をふまえて本書は書かれている。
本書は特に若い人たちに読んでもらいたいと思う。かつて科学史家のトーマス・クーンは、科学革命を起こす変革者について繰り返し次のようなことを述べている。「変革者はふつう非常に若いか、危機に陥っている分野に新しく登場した新人であって、古いパラダイムで決定される世界観やルールの中に他の人たちほど深く埋没されていない。」(『科学革命の構造』,
トーマス・クーン, みすず書房, 1971)事実、日本において『複雑系』研究が立ち上がった十数年前から京都大学で行われてきたワークショップでも、20代や30代の若い研究者たちによって熱気ある議論が行われてきている。もちろんただ年齢が若ければいいというわけではなく、むしろ意欲的な姿勢やフレッシュな発想という意味で「若い」ことが求められているのである。
本書を通じて、読者は受け身で終ることなく積極的に最先端の議論に参加してほしいと思う。その意味でも、本書は完成したものというよりはむしろ入口といってよい。この未完成の地図を片手に、ともに歩んでいきたいものである。
さあ、知的冒険の旅へ出発しよう!
内容(「BOOK」データベースより)
概念理解にとどまらずもう一歩踏み出して、自分なりに勉強してみようという人への好ガイド。慶応大学SFC「複雑系勉強会」の成果をもとに、複雑系の全体像をわかりやすく解説。
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