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「GOTH - リストカット事件」(乙一)、書評乙一さんの描く人物は、やはり、観察者だと思う。 特に、殺人者、あるいは、死に興味を抱く人物を描くとき、それが強い。 本書は、森野と呼ばれるゴシックロリータ(いわゆるゴスロリ)の高校生と、主人公であり、同級生でもある”僕”とで構成される連作。 森野は、人と交わることがほとんどなく、クラスの中でも浮いている。 一方、主人公の僕は、世間に対しては、明るい人物を演じている。 しかし、森野も僕も、”死”に興味を持っており、また、ほかの人物とのかかわりへのクールさという点で共通点がある。 そんな二人のかかわった”死”に関するいくつかの物語が収録してある。 そして、ほとんどそのすべての場合、各登場人物は、死に対して、”当事者であるかないかにかかわらず”、感情の激流に飲まれるのではなく、感情を観察するかのように振舞うのだ。 いわゆるホラー小説としての乙一さんの小説の”怖さ”は、 人が死ぬ。を、例えば、葉っぱが落ちる。とか、砂塵が舞う。 とか、いう”事象”と同列で捕らえていることにあると思う。 そして、観察者である登場人物は、それを、ただ、観察し、反応を理解しようとするだけなのだ。
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