「蹴りたい背中」(綿矢りさ)、書評
本作、「蹴りたい背中」は第130回芥川賞受賞作。
このときの芥川賞は「蛇にピアス」とのダブル受賞となった。
氏は芥川賞を19歳の時に受賞しており、芥川賞受賞者として史上最年少の快挙となった。
その清楚なルックスともあいまって文学の世界だけでなく、そのほかのメディアでも非常に大きな話題になった。
既に本作の売り上げは100万部を突破しているようだ。
本作の主人公は、友達ができず、クラスになじめずにいる女子高生。
近くにいながらも、絶望的にかみ合っていない主人公とクラスメイトとの心。
そんな心を冷静に見つめながら、それでも、人と交わりたいと願う主人公の心の動きを追っている。
いくつかの出来事の中で、人を見下したり、離れてみたり、心に殻を作ってみたり。
本作の主人公の心は脆く、そして、歪んでいる。そして、主人公自身がそれを自覚しているのだ。
つまり、本作はそんな孤独な心について描いた作品である気がする。
蹴りたい背中という題名は、同じくクラスになじめずにいた「にな川」という男子学生の背中のことを指している。
なお、綿矢りさ氏は17歳の時、デビュー作「インストール」で史上最年少の文藝賞を受賞。
2作目の本作で芥川賞受賞と作家として、これ以上ないスタートを切っており、今後、どんなキャリアを積んでいくのか、楽しみな作家である。
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蹴りたい背中
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『インストール』で文藝賞を受賞した綿矢りさの受賞後第1作となる『蹴りたい背中』は、前作同様、思春期の女の子が日常の中で感受する「世界」への違和感を、主人公の内面に沿った一人称の視点で描き出した高校生小説である。
長谷川初実(ハツ)は、陸上部に所属する高校1年生。気の合う者同士でグループを作りお互いに馴染もうとするクラスメートたちに、初実は溶け込むことができないでいた。そんな彼女が、同じくクラスの余り者である、にな川と出会う。彼は、自分が読んでいるファッション雑誌のモデルに、初実が会ったことがあるという話に強い関心を寄せる。にな川の自宅で、初実は中学校時代に奇妙な出会いをした女性がオリチャンという人気モデルであることを知る。にな川はオリチャンにまつわる情報を収集する熱狂的なオリチャンファンであった。
物語の冒頭部分を読んだだけで、読者は期待を裏切らない作品であることを予感するだろう。特に最初の7行がすばらしい。ぜひ声に出して読んでいただきたい。この作家に生来的に備わったシーン接続の巧みさや、魅力的な登場人物の設定に注目させられる作品でもある。高校1年生の女の子の、連帯とも友情とも好意ともつかない感情を、気になる男子の「もの哀しく丸まった、無防備な背中を蹴りたい」思いへと集約させていく感情と行動の描写も見事だ。現在19歳の作者でなければ書くことができない独自の世界が表現されている。
(榎本正樹)
出版社/著者からの内容紹介
高校に入ったばかりの蜷川とハツはクラスの余り者同士。やがてハツは、あるアイドルに夢中の蜷川の存在が気になってゆく…いびつな友情? それとも臆病な恋!? 不器用さゆえに孤独な二人の関係を描く、待望の文藝賞受賞第一作。第130回芥川賞受賞。
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