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「きらきらひかる」(井上由美子, 伊武桃内)、書評「きらきらひかる」という題名の小説は、現在のところ恐らく2冊ある。 一つは、「冷静と情熱のあいだ」などで知られる江國香織氏の書いた「きらきらひかる」。 そしてもう一つが、本書である。 これら二冊は、内容が全く異なっており、本書「きらきらひかる」は、深津絵里主演でドラマになった監察医の物語のノベライズ版である。 もともとは、郷田マモラ氏が連載していた「きらきらひかる」という漫画が原作のようだ。 監察医とは、死因が不明な急性死、事故死などといったいわゆる不自然死のうち、犯罪の疑いのないものについて検案、解剖する医師のことであり、僕にとってなじみの薄いものだった。 天野ひかるという人間味溢れる監察医を主軸に、個性溢れる四人の女性が、様々な事件を通して、友情を深め、いくつかのドラマが展開される。 人の死という間違えば、暗く、悲しい物語になりそうなテーマを、人の痛みや弱さなど、人間味溢れるテーマへと非常にうまく切り替えている。 主人公の明るさや、その周りを支える人々の個性によって、暗さはなく、むしろ、明るいすがすがしい物語になっている。 小説を読む限り、ドラマとしてかなり面白かったであろうと思われる一冊である。 本書の中で象徴的だった台詞を以下に挙げておく。 死んだ人は生き返らないわ。生きている人は、痛い、とか熱かった、とか話すことができるけど・・・この人には、何の準備もなく突然、死が訪れたのに、何も二度と喋れない。・・・ だから、解剖して・・・どれくらい苦しかったのか、何か訴えたいことがあったんじゃないか・・・最後の言葉を聞いてあげたいの
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