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「嫌われものほど美しい-ゴキブリから寄生虫まで」(ナタリー アンジェ)、書評ゴキブリ、寄生虫、さそり、毒蛇、ハイエナ、左に挙げたような動物達はどちらかと言えば、嫌われ者の部類に入る。 本書は、それらいわゆる嫌われ者の動物達が実はすばらしい特性を持っていること。 逆に一般に好かれている動物達にも意外な一面があること。 など、動物の意外な一面について取り上げた科学エッセイである。 いるかやたんぱく質、寄生虫、アイアイなど、ミクロからマクロまで様々な事例が取り上げられており、生物学における興味深い分野を幅広く知ることができる。また、その文章は非常に読みやすい文章で書かれており、専門的な用語をあまり知らない人にもすらすらと読める内容になっている。 筆者であるナタリーアンジェ氏は、ニューヨークタイムズのサイエンスライターであり、ピューリッツァー賞やルイストマス賞など多くの賞を受賞しているそうだ。本書は、ニューヨークタイムズにのった科学エッセイを統合したものであるらしい。 また、後半部では、動物だけでなく、きわめて優秀な(そして、ちょっと変わった)生物学者にも焦点を当てている。 結論には、皮肉が利いていたり、ユーモアが添えられたりしていて、翻訳者と共に文章のうまさを感じさせる。 なお、 多くの鳥が、子供の多くを浮気によって宿すこと。 チンパンジーの雄は精子の数によって競争をするため生殖器が大きく、ゴリラは力によって競争をするため、生殖器が小さいこと。 トンボは、メスに食べられないようにメスを押さえつけ、曲芸のような変わった形で交尾をすること。 ランセットという肝吸虫の幼虫に関する自己犠牲の話。(※1) などは、そんなバカな-遺伝子と神についてで知られる竹内久美子氏のいくつかの書籍にも共通するネタである。 また、朧げな記憶によれば、ランセットに支配された蟻についてはベルナールウェルベルの小説「蟻」にも小説中のキャラクターとして登場する。(もしかすると、「蟻の時代」だったかもしれない。) (※1)ランセットは蟻と陸棲の巻貝と羊の間を順に行き来する寄生虫である。羊の中で産みつけられた卵は、羊の糞によって外に出る。その糞は、それを常食としている巻貝に食べられる。卵は巻貝の中で幼虫になる。幼虫は再び、排泄される。これを蟻が食べる。蟻に食べられると、ランセットは蟻の体のあちこちに散る。その中で脳にランセットが入り込んだ場合、蟻は、早朝と夕方羊が草を食べる頃に草の葉の先に上るようになる。羊に食べられた蟻の中では、ランセットが成長し、再び、羊の中に卵を産む。そして、以上の循環が再び繰り返されることになる。ここで、脳に入り込んだランセットは繁殖することも無く、仲間のために死ぬことになる。 この事例は、「利己的な遺伝子」によって説明できる一つの例として取り上げられていた気がする。
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