「こころ」(夏目漱石)、書評
夏目漱石は戦略的な小説家であると言われている。
初期の頃、「坊ちゃん」や「我輩は猫である」などのいわゆる大衆受けする小説を書き、「こころ」や「明暗」などはその小説家としての地位を確立してから仕上げている。
最初に本書「こころ」や「明暗」を書いていたら売れなかっただろうというのは、どこかで読んだ文学考の一説だった。
「こころ」は夏目漱石の作品の中でもっとも好きな小説のひとつである。
中学だか、高校の教科書に載っていて、本書を読んだのはそれがきっかけだった。
先生とK、先生の妻のいわゆる三角関係を描いた小説であるが 三角関係による愛憎というよりは親友を裏切ったことに対する後悔に焦点があてられている。(それは先生が裏切ってすぐにKが死を選んだからなのだが…)
登場人物の微妙な心理描写が非常にうまく読むものを飽きさせない小説である。
先生は、Kの死後長い時間を生きながら、同時にKが死んだその時をずっと生き続けていたのだろ
う。
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こころ
(岩波文庫)
こころ
(新潮文庫)
こころ
坊っちゃん (文春文庫)
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出版社/著者からの内容紹介 青春を爽快に描く「坊っちゃん」、知識人の内部の葛藤を真摯に描く「こころ」。日本文学の永遠の名作を一冊に収めた漱石文庫の決定版
内容(「BOOK」データベースより) 四国の松山に赴任した青年教師の社会の不正に対する痛快な反抗精神を描く『坊っちゃん』。恋愛のために親友を裏切り自殺へと追い込んだ罪の意識から、自らも死を選ぶある人の生涯を描き、孤独な近代人の苦悩を超え、新しい時代に生きる決意を示した『こころ』。夏目漱石の二大作品を収めた21世紀への日本の遺産。
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