無名 沢木耕太郎
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 「無名」(沢木耕太郎)、書評

 いまさら言うまでもないことだが、沢木耕太郎さんは、

 ユーラシア大陸からヨーロッパへといたる自身の旅行体験をつづった「深夜特急」

 元東洋ミドル級チャンピオンであったボクサーの再起の生活を追い、新田次郎文学賞を受賞した「一瞬の夏」

 などの作品で知られる著名なノンフィクションライターである。

 89歳で亡くなった自身の父親。決して有名ではなく、読書と酒が好きだった無名の父親について語ったノンフィクションである。

 自身の父親という世間的にはまったく無名の人物を主人公としながら、飽きさせることなく、描ききる筆力はさすがだと思う。

 無名ではあったものの、知らないことは何もなかった父。そんな父親に畏怖を抱いていたと沢木耕太郎さんは書く。

 そして、だからこそ、知らないことは書かない。という姿勢を自身の中に持つようになったのだと。

 知らないことは書かない。自分の書きたいことを書く。

 今日、先日出版されたアフィリエイト本の打ち上げで編集者の方と話していて、似たような話が出たせいですごく思うところがある。

 僕にしかできないこと。僕にしか書けないこと。

 これが僕のした仕事です。と自信を持っていえる仕事を僕は一生のうちにどれくらいすることができるのだろうか。

 後半はやや父親の俳句が多すぎる印象。が、それは個人の好みに過ぎないだろう。

無名 沢木耕太郎

無名

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内容(「MARC」データベースより)
父が脳の出血により入院した。秋の静けさの中に消えてゆこうとする父。無数の記憶によって甦らせようとする私。父と過ごした最後の日々…。みずからの父の死を正面から見据えた、沢木文学の到達点。書き下ろし長編作品。

  
 
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