ロストボーイ Itと呼ばれた子 少年期
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「ロストボーイ」(デイヴ ペルザー)、書評

 カリフォルニア州史上最大の虐待を乗り越えたデイヴペルザー氏の自叙伝「Itと呼ばれた子」シリーズの第二部。

 このシリーズは全部で三部作になっており、本作は里子として過ごした9歳から18歳までの少年期の自叙伝となっている。

 例えば、幼児虐待などの問題は、それが表面化したとき、初めて大々的に取り上げられることが多い。

 しかし、しばらく経つと、まるでその事件が解決したかのように、人々の関心はそのほかの事件へと移行してしまう。

 だが、実際には、虐待を受けていた子供にとってはそれから救い出された後も大きな試練が沢山待ち構えているのだ。

 本書は、その当たり前の事実を思い出させてくれる本。

 体験者による里子の利点やそれに対する社会の目、自身の心のゆれなどに関する詳細な記述は、非常に説得力があり、考えさせられるところが多い。

 幼児虐待に関する興味をもたれる方であれば、シリーズを通して一度は読んでおくと良い本だと思う。

ロストボーイ Itと呼ばれた子 少年期

ロストボーイ―Itと呼ばれた子 少年期 (単行本)

It(それ)と呼ばれた子―少年期ロストボーイ (文庫)

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著者はカリフォルニア州デイリーシティに生まれ、州史上ワースト3に数えられるほどの児童虐待を実の母親から受けた。その前著であるように名前も呼ばれず「It」と言われ、兄弟のうちでただ1人いじめぬかれた。食べ物をぎりぎりまで制限される。服もボロボロになるまで与えられない。ひとりガレージに追いやられ寒さと飢えに苦しむ。そして、ときどき嵐のようにやってくる折檻。「母さんはそのうち自分を本当に殺すつもりだ!」

恐怖が現実味を帯びたとき、彼は全身全霊で命を守る術を考えた。驚くべきことに彼は教師や警官やソーシャルワーカーという他人である大人と、郡の福祉政策と裁判所によって生き延びることができたのである。執拗に彼を破滅させようとしているとしか思えない母親の所業は、このごろ日本でも問題となっている幼児虐待とは違っているように思える。大人になった著者が、母親はアル中で病気だったと自分自身にいい聞かせている。そして母親自身、自分の母親との関係に悩んでいたようだ。

それにつけても、里子に出された著者、が紆余曲折の末、成功したことは賛美せずにいられない。普通の大人になるだけでも奇跡的なのに、アメリカ国民として1人「世界の優れた若者」に選ばれたり、聖火リレーの栄誉を担ったり活躍している。何よりなのは、彼が幸せな家庭を築いたことである。自分にはトラウマがあると思い悩んでいる人はぜひ一読を。(高津紀代子)

内容(「BOOK」データベースより)
4歳のころから母親の執拗な虐待を受けつづけたデイヴだったが、12歳のときに警察に保護され、フォスター・チャイルド(里子)として18歳までホームで生活することになる。しかし、ホームを転々としながら偏見や差別にさらされ、虐待の記憶に苦しみ、母親の影におびえる日がつづく。ある時は友達に裏切られ、放火犯の汚名を着せられ施設に送られてしまう。また母親は、それを口実に精神病院に送ろうと画策する。そんな境遇のなかでも、フォスター・ペアレンツ(里親)や友達と出会い、そして別れ、やがてひとりの人間として、新たに旅立っていく。

内容(「MARC」データベースより)
母親の執拗な虐待からの脱出。そして差別と偏見にさらされるフォスター・チャイルド(里子)の暮らし。なおも消えぬ虐待の記憶と母親の影…。前作「"It"と呼ばれた子」につづき、被虐待児自身が明かす少年期。

  
 
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