「ローマ人の物語 - 終わりの始まり」(塩野七生)、書評
本書からはローマ帝国の衰退の道が語られる。
本書のスタートは、五賢帝の最後の皇帝として知られる哲人皇帝マルクス・アウレリウス。
パクス・ロマーナのために完璧に作られたローマの防衛線と防衛システム。
しかし、その完璧さのために蛮族の侵入が未然に防がれ、結果的に防衛線の訓練が不十分になる。
システムを完璧にしてしまうと結果的にそのシステムの訓練が足らなくなり、システムが劣化してしまう。という逆説が興味深い。
現在の組織を考えた時も一考に値する。
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ローマ人の物語 - 終わりの始まり (単行本)
ローマ人の物語 - 終わりの始まり (上)
ローマ人の物語 - 終わりの始まり (中)
ローマ人の物語 - 終わりの始まり (下)
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出版社/著者からの内容紹介
五賢帝時代の掉尾を飾り哲人皇帝としても名高いマルクス・アウレリウス。後世の評価も高い彼の時代に、既に衰亡への萌芽は見えていた――従来の史観を覆す新たな「ローマ帝国衰亡史」が今始まる。
本書で語られるのは、五賢帝時代の掉尾を飾り哲人皇帝として名高いマルクス・アウレリウスから、セプティミウス・セヴェルスまでの治世です(紀元2世紀末から3世紀初)。タイトルのとおり、いよいよローマの衰亡が描かれていくことになります。
ギボンの『ローマ帝国衰亡史』を初め、ローマ帝国の衰亡は五賢帝時代の終焉とともに始まったとする史観がこれまで主流でしたが、本書ではこれに異を唱えています。ローマが絶頂を極め、後世の評価も高いマルクス・アウレリウス帝の政治を、第IX巻で扱ったハドリアヌス帝やピウス帝、さらにはユリウス・カエサルとも対比させ新たな視点で検証すると、ローマ衰退への道は既に敷かれ始めていたということが明らかになるのです。
指導者である皇帝たちの資質の変化や、国内の階層間の対立、そして帝国を外から脅かす異民族の存在など、さまざまな要因が作用して、帝国はゆっくりと没落への階段を降りていきます。ついには、マルクスは戦地で没し、その息子コモドゥス帝は怠惰に陥り暗殺され、続く時代では帝国を守ってきた将軍たちが割拠して帝位を争うという、「黄金の世紀」では考えられなかった混乱へと突入していきます。
永遠に続くと思われた右肩上がりの時代を終え、新たな時代へと踏み入ったローマ帝国。その指導者たちの迷いと奮闘ぶりから浮かび上がってくるのは、「矜持」を中心に据えた新しい指導者論です。同じように混迷と不安に覆われている現代の日本にとっても、彼らの生き方から学ぶことは多いに違いありません。
「ローマ人の物語」全15巻を時代ごとに三つに区切ると(ローマ建国からユリウス・カエサルまでの「第一期」、アウグストゥスによる帝政開始から帝国の絶頂期までが「第二期」)、この巻は「第三期」の始まりと言うことができます。第一期や第二期のローマ帝国を常に視野に入れて叙述される本書は、「ローマ人の物語」の導入篇としてもふさわしい内容であると思われます。
内容(「BOOK」データベースより)
なぜ優れた哲人皇帝の時代に、「帝国の衰亡」は始まったのか。既成の歴史観に挑む塩野七生版「ローマ帝国衰亡史」がここに始まる。
内容(「MARC」データベースより)ローマの偉大さはインフラストラクチャーの整備にあった。道路、橋、水道から、医療、教育に至るまで、「ローマの本質」を描き尽くした渾身の一冊。
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