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「ローマ人の物語 - 迷走する帝国」(塩野七生)、書評前巻から始まったローマの衰退は、本巻に入って急速にそのスピードを増す。 もはや帝国は攻め込まれてのちに迎撃するのが常態になってしまう。 精緻なシステムというのは、非常にデリケートなバランスでできていて、一つの変革がほかの変革を生まずにはおかないことがよくわかる。 そして、一度変えてしまうと、それを元に戻すことすらとても難しくなる。 特に気になった描写はアントニヌスの勅令のくだり。 すべての人に市民権を与えるアントニヌスの勅令が結果的にローマ市民の誇りを奪ったという考え方は非常に興味深い。 努力によって入れ替えが可能な状態での順位付けは誇りを生み出すために非常に重要なこと。 すべての人を横並びにする。というのは倫理の土俵で戦うととても正しいように見える。 しかし、それは結果として、上位層、下位層どちらについても、その活力を奪ってしまうのではなかろうか。
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