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「事変―リットン報告書ヲ奪取セヨ」(池宮彰一郎)、書評時代は、昭和初期。満州事変に伴う国際問題を解決するため、日本の外務省は、国連のリットン報告書を隠密裏に奪い取る計画を立てる。 本書「事変」は、そのリットン報告書をめぐる外務省、軍部、そして、国際連盟の暗闘の物語だ。 敵が、外国だけでなく、国内にもいる。というのが、このころの外務省の悲劇なのだろう。 一部の人間の暴走に、ほかの多くの人が引きずられる。という現象は、実際のところ、歴史上、何度も起こっている気がする。 それをとめるためにまっとうな人ががんばっても、結局、なかなかその流れを止めることができないのだ。 そんなとき、その流れに乗っていない人は、自分の身の置き場をどこに置いたらいいのだろう。 なお、主人公は、昭和初期の人間なのだけれど、著者は子供のころに実際に会っているらしい。 昭和初期の話というと、感覚として歴史上の話なのだけれど、実際にその時代に生きていたという人が現代にも存在することを思い出すと、いつもちょっと不思議な感じがする。
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