|
|
「戦争における「人殺し」の心理学」(デーヴグロスマン)、書評本書は、戦争における「人殺し」の心理について記述した書籍。 著者であるデーヴグロスマンは、軍人であり、かつ、心理学者である。 また、実際に戦争を体験している軍人への多くのインタビューを通して、本書を作成している。 戦争は人間にとって、非常に重要な話題でありながら、多くの場合、避けられる話題のひとつだ。 だから、われわれは、それらのことをイメージでのみ考えてしまう。 戦争では、実際にはいったい何が起きているのか。 批判するのでもなく、肯定するのでもなく、戦争における人殺しの心理学を理解すること。は、非常に有用だ。 それが本書の趣旨である。 考えるところはいろいろあったのだけれど、とりあえず、自分のためにいくつか重要な点を列記。 戦争において人殺しを行うことはある意味で当然のことのように思えるが、ほとんどどんな場合でも、(たとえば、自分や仲間が殺されそうになってさえ)人を殺すということに対する心理的な抵抗は非常に強い。 人を殺せない人は臆病なわけでは決してない。(たとえば、人を殺さなくてもすむ危険な任務には進んで参加したりする。) 20世紀以前の戦争での殺傷率はイメージと違って非常に低い。(たとえば、意図的に人を狙うのを避けようとするために、人1人を殺すのに4万発もの弾丸が必要だったりする。つまり、時代劇のようにばっさばっさ人を切ることができるなんて人は現実にはほとんどいない。ということ。) 近接的で直接的に人を殺してしまった場合、多くの人に心理的障害が起こる。 直接的な距離、心理的な距離、社会的な距離などのいくつかの距離を設けることでこれらの抵抗はある程度減る。 また、上官と下士官(命令する人と実行する人)を分けることで、罪の分担が行われる。 古典的条件付け、オペラント条件付けなどの心理学的条件付けに基づく訓練を行うことで発砲率は15%程度から90%近くまで上げることができる。(しかし、その心理的な代償はとてつもなく大きい。) など。
|
Copyright(C) 2002 - Mitsuharu Matsumoto All rights reserved.