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「志村流―金・ビジネス・人生の成功哲学」(志村けん)、書評僕は、職人という人間をとても尊敬している。 それは、僕自身が生涯を通して、ものを作る人間であり続けたいと願っているからであり、職人という人間は、ものを作る仕事を、極端なまでに突き詰めようとする人間であると思うからだ。そして、彼ら職人が自身の仕事に持っている誇りをとても羨ましいと思っている。 例えば、「笑い」や「演劇」は、建物や道具などと違って、一瞬で消えてしまうものではあるけれど、そうであるがゆえに、長く続くものとは対照的な花火のような一瞬で消え行くものの美しさがある。 そして、そのような「一瞬で消え行くもの」を作る人には、対照的であるがゆえに、多分、職人ととてもよく似た人間がいて、私生活では、とても無口で地味な至極ストイックな人間も多い。 本書を読む限り、志村けん氏もその一人であるようだ。(それは、実際の生活がそうということではなく、仕事に対する一種の雰囲気としてそれが感じられる気がするのだ。) 本書の中で「バカ殿様」や「変なおじさん」を自身がプロデュースしているキャラの一つとして、ごく客観的に捕らえている志村けん氏の姿勢は、表向きに見える「笑い」の派手さよりも、むしろ「笑い」を追求するストイックな美意識が、より強く見られる気がする。 例えば、北野武氏や志村けん氏などといったいわゆる「お笑い」の世界で生きている人を僕は直接は知らないけれど、そういう「笑い」の世界で成功している人の著書を読むと、それとは対照的なストイックな美意識が見え隠れしていて、とても興味深く読んでいる。
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