「しょっぱいドライブ」(大道珠貴)、書評
大道珠貴氏は、本書のタイトルとなっている「しょっぱいドライブ」で、第128回芥川賞を受賞した。
本書には、タイトルである「しょっぱいドライブ」の他に「富士額」、「タンポポと流星」の2作品を収録している。
しょっぱいドライブは、34歳のミホと60代の九十九さんを中心にした小説である。
本書の取り扱うテーマは、なんなのだろうか。
ミホと九十九さんとの間には肉体関係があり、その会話の端々を見ると恋愛小説にも見える。
しかし、ミホはその関係をひどく冷めてみていて、通常の恋愛小説のように情熱的な物語とはいえない。
むしろ、全体を通して、けだるく、無気力な空気が支配する。
いわゆる芥川賞らしい小説である。
小説として、こういうムードは良くあることなのだが、全体を通して、この小説は「しょっぱい」小説なのだといえるだろう。
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しょっぱいドライブ
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Amazon.co.jp 芥川賞受賞作の表題作を含む3つの作品を収めた本書は、『背く子』や『裸』など、九州を舞台にした作品によってみずからの文学世界を築きあげてきた大道珠貴にとって、新境地となる短編集である。
「しょっぱいドライブ」は海沿いにある小さな町を舞台に、34歳の実穂と60代前半の男性九十九さんの微妙な恋愛関係を、語り手である実穂の視点から描く。実穂は家族ともども、長年にわたって九十九さんの人の良さにつけ込み多大な世話を受けてきた。父が亡くなり実家で暮らす兄とも疎遠になる中で、実穂は隣町でアルバイトをしながら独りで生活する日々を送っていた。実穂は地方劇団の主宰者の遊さんと関係をもつが、気持ちは次第に九十九さんに傾いていく。九十九さんの運転する車に乗って、生まれ故郷の潮の匂いの漂う町でデートを重ねる実穂。実穂の揺れ動く感情の流れと九十九さんの関係の機微を、作者の筆は正確に描き出す。30代女性と60代男性の恋愛という枠組みの中に、性や介護や経済の問題が示唆される。読者は、タイトルに含まれる「しょっぱい」に込められた多重的な意味内容に注意を向けるべきだろう。
このほか、中学2年生の不登校の少女と26歳の相撲取りという不思議な組み合わせのカップルを描いた「富士額」、若い女性同士の密着感のある奇妙な主従関係をつづった「タンポポと流星」を収録。現代人のさまざまな関係の有り様を描いた、つまりは「人間」を描ききった短編集である。(榎本正樹)
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