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「小説ワンダフルライフ」(是枝裕和)、書評死んだ後、人は一週間で、それまで生きてきた人生から一つだけ大切な思い出を選ぶ。 死んでから一週間後、その思い出だけを胸に人は天国に旅立つ。 この小説には、地上と天国の中継地点での、そんな一週間が描かれる。 亡くなった次の日には、相応しい思い出を選べる人間。 選ぶべき思い出を、より慎重に選ぼうとする人間。 作中、それぞれの生き方に応じて、彼らは様々な反応をする。
何十年も繰り返しだった人生の中で、自分の人生の意味をなかなか見つけられない人。 長く穏やかな結婚生活を生きながら、戦死した婚約者との思い出を選んでいく人。 人間の選ぶ思い出は様々だけれど、そこには、何かしら共通点がある気がする。 例えば、「病院で死ぬということ」や「死ぬ瞬間」、「生きる」や「愛が微笑むとき」などの物語が、小説を読みながら頭に浮かんできた。
死を強く意識するとき、人は、より深く生きることの意味を理解する。 多分、人に生きている実感を与える一つの要素は、締め切りや危機感なのではないだろうか。
ところで、 もし、自分がそういわれたら、僕は一体何を選ぶだろうか。 そして、あなたがそういわれたら、あなたは何を選ぶだろう。
なお、この小説は同名の映画を小説化したものです。
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