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「チェルノブイリいのちの記録」(菅谷昭)、書評本書の著者である菅谷医師は信州大学医学部助教授の職を辞し、1996年から2001年にかけての五年間、チェルノブイリで医療支援活動をなさっていた。 氏は甲状腺癌の専門医であり、チェルノブイリ原発事故の後、急激に増加したベラルーシのがん患者のために何か援助ができるのではないかと、単身ベラルーシに渡られたのだ。 NHKのプロジェクトXなどメディアでもその活動が取り上げられているので、ご存知の方も多いかもしれない。 本書は、氏のチェルノブイリでの活動の日記をそのまま単行本化したものであり、チェルノブイリでの日々の出来事、考えたことなどが、気負いなく淡々と描かれている。 前書きにチェルノブイリでの活動に対する氏のコメントが記述されているので引用しておく。 私がチェルノブイリの医療救援活動に足を踏み入れたのは、あくまでも自分自身の人生を再構築(リストラクチャア)するため、そして、自分探しのための、身勝手な考えによる行動であったことを、ここに書き加えておく。 本書を読むことで、チェルノブイリの現状や原発の問題など様々な問題を考えさせられることだろう。 なによりも自分自身どのように生きるべきなのか、何をするべきなのかなど、人としての生き方について考えさせられる部分が多い。 生きがいを持っていた人の一生というものは、やはりおもしろく、小説になりやすい。 本書中に光る数々の言葉が、心を打って離さない。 それは、言葉だけでなく行動によって、人として美しい生き方の一つを氏が実際に示しているからなのだろう。 機会があれば一度は読んでおくと良い良書であるといえるだろう。 「病院で死ぬということ」を初めとして医療系の本には、考えさせられることが多い。
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