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「太公望」(宮城谷昌光)、書評商と周の時代。幼い頃に父母を殺され、たった数人だけ生き残った一族の子ども、望が羌の族長として成長し、周の統一を助けるにいたるまでを描いた一大歴史小説。 全三巻にわたる力作だが、なかなかにおもしろい。 昔、「封神演義」という強烈におもしろい漫画があったのだが、太公望はその主人公である。 封神演義では、妲己がものすごい悪者で、紂王は妲己に操られる人だったけれど、本書の中では紂王(受王)は悪い慣習にとらわれているとはいえ、近代的な思考能力を持った聡明な王であり、妲己も悪者ではなく、むしろ、太公望がほのかにあこがれる存在だったりする。 この前に読んだ宮城谷昌光さんの作品「沙中の回廊」は人物を覚えるのにすごく苦労したのだけれど、今回は、漫画を読んだことがあったので(内容は違うとはいえ)だいぶ楽だった。 (きっと、それもおもしろく読めた一因だろう。) なお、封神演義は、もともと明の時代に作られた同名の古代中国娯楽小説が元になっているらしい。 今調べたところ、封神演義は西遊記に次ぐ神魔小説なのだそうだ。 なお、本書の中で、商となっている国は、昔、学校では、殷と習っていた国である。 「沙中の回廊」の主人公である子会は斉の国の武将として出てきたが、本書の中で斉は太公望が作った国であることを知る。(同名の国がなければであるが) 読んでいくとだんだん人物関係がつながっていきそうな予感である。
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