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「私を抱いてそしてキスして-エイズ患者と過ごした一年の壮絶記録」(家田荘子)、書評家田荘子氏は、「極道の妻たち」などの作品で知られるノンフィクションライターであるが、本作品は氏の出世作であり、その代表作だといえるだろう。 氏は、本作品で第22回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。 副題にもあるとおり、エイズボランティアとして単身アメリカに渡り、実際にエイズ患者と生活を共にしている。 本書は、その体験を元にした生のエイズ患者の姿を描いている。 患者の名はジーナ。黒人のアメリカ女性である。感染経路は、出産時の輸血による血液感染。非常に難産で子供も4ヶ月後に亡くなったがHIVウィルスだけが、ジーナの体に残された。 怒り、哀しみ、絶望。様々な感情が、ジーナの心をよぎっていく。 1980年代後半。HIVの感染経路も、一般にはよく知られていなかった頃。等身大のエイズ患者の姿を映し出した意欲作だといえる。 この本といい、「病院で死ぬということ」といい、いわゆる「死」に関連するノンフィクションには考えされられるところが多い。 人は、その人生の前に突然降りかかる不幸を、一体どのように処理したらよいのだろうか。 なお、極道の妻たちと同様、本作品も映画化された。
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