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「傭兵の誇り-日本人兵士の実録体験記-」(高部正樹)、書評高部正樹氏は、10年以上の経験を持つ現役の傭兵である。驚くような話だが、本当に傭兵として戦地で戦闘に参加している。 氏は、もともとは自衛隊員だったそうなのだが、腰を壊し航空部隊のパイロットとしての進路が絶たれた時、もう一つの夢であった歩兵志願のため、傭兵の道を選ばれたらしい。 アフガニスタン、カレン民族解放軍、クロアチア傭兵部隊などの軍隊を経験し、激戦を生きてこられた既にベテランの域にある傭兵であるようだ。 国語辞典で傭兵という言葉を調べてみると 傭兵:金銭的報酬を条件に、契約に基づいて軍務に服する兵。 とあるが、実際には、傭兵は金銭的には全く恵まれない職業であるらしい。 傭兵というのは、ぜんぜん儲からないものだということを本書を読んで初めて知った。 例えば、本書に記述がある、アフガニスタン、カレン民族解放軍、クロアチア傭兵部隊での氏への支給額を見てみると アフガニスタンでは戦場から帰るたびに6000円。 カレン民族解放軍では無給。 クロアチア傭兵部隊では、28000円。 という生活費もまかなえないほどの薄給であったそうである。(ただし、最低限の衣食住は軍からの支給によりまかなえるらしい。) そのため、高部氏は、日本でアルバイトなどをして、お金を稼いでは、ビザをとって、様々な戦場へと赴いている。 つまり、傭兵の仕事は、基本的に金銭目的のものではないのだ。 氏の場合は、幼い頃から純粋に"強さ"を求めており、その強さの答えが実際の戦場で最強になることにあると感じられたからだそうだ。 例えば、カレン民族解放軍には、純粋に少数民族の民族開放に尽力するために義勇軍として参加されている日本人がいたそうだし、国で徴兵されるのが嫌で傭兵として雇われているという面白いエピソードを持つよう兵もいる。 本書の著者である高部正樹氏は、テキストサイトとして有名な侍魂などでも紹介されており、僕はそこでの記述を本書の存在を知った。 現役の軍人の書いているものになど、そう出会えるものではなく、はっきりいって、その生活の一端を知られるだけで十分に面白いと思う。 また、氏は、本書の中で戦争について対岸からものをいうジャーナリストをこき下ろしている。 実際、現地に来たジャーナリストのせいで、何度も死にそうになったらしい。(特に訓練を受けていないジャーナリストの保護のために、多くの場合、現地の傭兵が付き添いをしているそうだ。地雷を踏み、爆発しそうになったジャーナリストを助けたり、あまりにも遅い歩行にかなり手を焼かれたなどのエピソードが記述されている。) なんと言っても、本書は日常的に戦場にいる人たちにしか発せられない「体験している人」の言葉の重みがある。 たとえどんなことを言ったとしても、戦地で戦っている人に「じゃあ、現状を知っているの?」と聞かれたら、正直、ぐうの音も出ないのだから。 それは、体験したことがある人とない人との間のどうやっても埋めることの出来ない壁なのではないだろうか。 ちなみに、本書原稿の一部も戦場で書かれている。
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